自己破産の免責不許可事由に関係する「詐害行為」って何!?

詐害行為をすると免責不許可事由に該当する可能性があります。詐害行為とは、自己破産する前に、破産者が自分の財産を減らす行為を指します。

今回は、どのような時期にどのような行為をすると詐害行為になるのか紹介をします。また、詐害行為をおこなった場合、免責不許可事由に該当するのかについても紹介します。

詐害行為とは?

詐害行為とは、自己破産をする前に破産者の責任財産を減少させる行為のことです。破産する以上は、破産者の財産というのは債権者全員の財産になるためです。そのため、勝手に譲渡したり、売却したりして財産を減らしてしまうのはダメということです。
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たとえばですが、詐害行為は破産者名義の自動車や住宅などの不動産を親戚などに無償で譲渡することです。

詐害行為否認

詐害行為否認(否認権)とは、破産法160条にて定められた破産管財人の権能です。

第160条
1.次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
2.破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、破産手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、破産財団のために否認することができる。
3.破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

簡単にいえば、詐害行為否認とは、詐害行為の取引をなかったことにして、債権者のもとから詐害行為によって流出した財産を破産財団へ戻す破産管財人の権能です。

詐害行為になる3つのパターン

破産法上、詐害行為になるパターンは3つあります。

  • 本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却する
  • 無償で他人に譲渡・贈与する
  • 適正価格をもらって換金・売却する

この3つです。すべて詐害行為になる可能性があります。

特に、「本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却する」、「無償で他人に譲渡・贈与する」この2つは詐害行為として、破産管財人に指摘されて、その取引を否認することでしょう。そして、「適正価格をもって換金・売却する」についですが、原則は問題ないのですが、例外もあるので注意してください。

本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却する

本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却するとは、どういったことでしょうか。

たとえばですが、時価1000万円の不動産を500万円で親族・友人・知人に売却するケースが該当します。なぜなら、安い価格で譲渡・売却することで破産者の財産を500万円減少させてしまう行為です。結果、本来、債権者への配当に充てるべき財産が500万円分なくなることになりますので、詐害行為の典型的な例となります。

この詐害行為がおこなわれた場合、時期は問題にはなりません。つまり、詐害行為の条件が成立するのであれば、自己破産の何年前であっても裁判所や選任された破産管財人から、その譲渡・売却行為は否認される可能性が高くなります。

この詐害行為が成立する条件は原則として2つです。

つまり、詐害意思があった、受益者の悪意があったの2つです。

詐害意思があった

つまり、破産者が将来的に自己破産することを知っている上で、あえて時価よりも安いか買うで譲渡・倍角する意思があったかどうか、これが問題になります。債権者へ迷惑をかけることを破産者が自覚していながら、安く売却・譲渡したのかということです。この意思のことを詐害意思と言います。

積極的に財産隠しをしようとした場合は当然のことですが、単純に破産後に債権者の取り分が減ることがわかっていながら、譲渡行為をしたのであれば、詐害意思があったと裁判所や破産管財人から「詐害行為」として認定されます。

また、本人が売却・譲渡した当時に、まだ破産するつもりがなかったとしても、客観的に見て明らかに債務超過な状態で財産を売却・譲渡したのであれば、詐害意思があったものとみなされる可能性があります。

受益者の悪意があった

2つ目の条件としては、受益者の悪意の有無です。

たとえば、財産の購入・譲渡を受けた側が、つまり、相手側が、その行為の当時、破産債権者を害することを知っていたか、知らなかったが問題となります。

譲渡人が破産する予定があることを知りつつ、その譲渡人から財産を相場より安い値段で譲り受けたかどうかです。

前述した、「破産者の詐害意思」と「相手の受益者の悪意」の2つがそろうことが、詐害行為の条件になります。

たとえばですが、不動産を例にして説明をします。売主側と買主側双方とも「売主が破産する可能性があることを知っていながら、相場価格よりも安い値段で売買もしくは無料で贈与された場合、詐害行為に認定されます。

そして、この場合、自己破産の前、何年もさかのぼって、裁判所や破産管財人にその売買もしくは贈与行為は否認されることになります。

何年もさかのぼってと記載していますが、もうすぐ破産することを両者が知りながら財産を安く譲渡・売却することが詐害行為の条件となりますので、現実的な運用として5年も10も前までさかのぼって調べられるとういことはありません。

そのため、5年前から破産することを画策し不動産を安く譲渡し、その上、譲渡を受けた側も当時からそのことを知っていた場合、詐害行為は成立します。しかし、実際問題、そのようなことは不可能です。

現実的には、自己破産の2年前までさかのぼり、財産処分行為が行われている場合については、破産手続のときに問題視されることになります。

破産債権者を害する行為の否認については、前述している破産法160条第1項1号になります。

一 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

では、相手側が自己破産することを知っていたかについてどうやって調べるのか?

前述してきた詐害行為において、売却や譲渡を受けた相手側にも「債権者を害するということを知っていた」ことが、詐害行為成立の条件になります。

自己破産のことなどまったく知らずに、単純に安く住宅を購入できた購入者が、後日、いきなり破産管財人からの連絡で、「2年前に購入した不動産は詐害行為なので取引をなかったことにします」と言われても困るでしょう。住宅の場合、住宅ローンを組んで購入するのが一般的なので、「はい、そうですか」と納得することはできないでしょう。

そのため、詐害行為の条件は、原則として「破産者のみならず相手もグル」の場合に成立するのです。もちろん例外もあります。

相手が破産債権者を害することを知っていたかどうか? についてですが、実際に破産管財人が否認権をどうやって行使するのか、判断するのでしょうか。

管財人に相手の心中まではわかるはずはありません。当然、推定として「3ヶ月前に家族や親族に明らかに安い値段で売却した」というのであれば、受益者の悪意を疑われることになるでしょう。

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その一方で2年前に相場より安い値段で不動産会社へ住宅を売った程度なのであれば、相手の不動産会社に、債権者を害する意思があったと通常は思われません。
実際の運用の問題として

  • 誰に
  • いつ
  • いくらで

財産を譲渡・売却したのかという状況により、詐害行為により疑われるのかどうかも変わってきます。

譲渡を受けた側は、受益者の悪意がなかったこと、つまり「知らなかったこと」の立証責任があります。もし、管財人から否認の訴えを起こされた場合、詐害行為じゃないから財産を返済しないと主張するのであれば、自分で知らなかったことを証明しなければなりません。

例外

ただし、例外があり、支払停止や破産手続きの申立てより後の詐害行為は例外となります。

これは、破産法160条第1項2号にて定められています。

自己破産前に本来の価格よりも安く財産処分した場合、詐害行為が成立する条件は、原則として「破産者の詐害意思」、「受益者の悪意」この2つが条件です。しかし、例外があります。

それが、破産者が支払停止または破産開始の申立てがあった後におこなった財産処分です。債権者への支払や返済が事実上停止した後、もしくは、裁判所に破産手続きの申立てをしたよりも後です。

この場合は、安い値段で財産を処分すること自体が認められない時期になります。債権者を害することを知っていた、知らなかった、という次元の問題ではなく、裁判所に「何やってんの?」と怒られる案件です。

そのため、この場合は、破産者に詐害行為の意思があったかどうかは関係ありません。

これは、破産法160条第1項2号にて定められています。

二 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

しかし、相手方が、破産が自己破産の申立てをしていたことや、支払停止になっていたことを知らなかった場合は、詐害行為になりません。購入者の立場として、売主が破産しそうかどうかを見抜くのは困難です。知らなくても落ち度はありません。何も知らず購入してしまったのであれば、管財人に没収されることはありません。

この場合も知らなかったことを証明するのは、購入者がする必要あります。譲渡相手が家族や親族であるのならばら、自己破産することを知っていたのでは? と破産管財人や裁判所に疑われても仕方ありません。

無償で他人に譲渡・贈与する

自己破産の前に、無料で金銭を贈与したり、住宅や自動車を他人の名義に変更したりするのも詐害行為になります。また、解約返戻金のある保険の契約者名義を自己破産前に他人に変更することも詐害行為に該当します。
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安い価格で財産を売却するよりも、無償で譲渡してしまう方が、債権者からしてみればタチの悪いことですから、おこなった場合、詐害行為になるのは仕方ないことでしょう。

無償行為の場合であっても、前述した詐害行為の条件はすべてあてはまります。

「破産者の詐害意思」と「受益者の悪意」の2つがそろうことで、何年でもさかのぼり、裁判所や破産管財人により否認されます。自己破産の申立て後におこなわれれば、詐害行為がなくても否認されます。

そして、無償行為の場合は、もう1つ特別ルールがあります。

もう1つのルールとは?

もう1つのルールですが、これは破産法第160条3項に記載されています。

3.破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

つまり、破産者に詐害意思があった、相手の受益者が破産の可能性に知っていたのか関係なく、破産管財人は、自己破産の6ヶ月前までにされた無償行為は、問答無用で否認することができるのです。

実際の値段よりも安い価格で財産を処分した場合、売主に破産債権者を害する自覚があり、買主もそのことを知っていた場合は、破産管財人が否認の対象にするのですが、無償贈与の場合は、意思や主観に関係なく、無料で財産を譲った事実が否認対象になります。

ただし、破産管財人の権能が及ぶのは、自己破産の6ヶ月前までになります。正確には、破産者が支払停止になる6ヶ月前までの無償行為が否認行為の対象になります。では、支払停止というのはどのような状態かと言いますと、債務者が返済不能な状態に陥って、主要な債権者への支払をストップせざる得ない状態になってしまうことを指します。

無償行為の否認の場合は、6ヶ月以上以前のことであれば、「本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却する」のときと同じように、破産者の詐害意思と受益者の悪意がそろった場合のみ否認の対象になります。そして、直近6カ月以内の無償贈与ならば、問答無用で否認対象となるわけです。

また、多少の対価を受け取ったとしても、実質的に無償での贈与とほとんど変わらない場合、無償行為として破産管財人の権能により否認されます。

例として、自動車の贈与を受けるのに、形式的に2万円を渡しても、その2万円は意味をなさず、無償の贈与として判断されます。

過去2年以内に生命保険を解約した場合の破産への影響

裁判所に提出する資産目録の明細には、過去2年以内に解約した保険で、解約返戻金が20万円以上のものは、すべて記載させられます。

主に、解約した現金の使い道を確認することが目的となります。現金の使い道の中に、否認対象行為や免責不許可事由がないかを確認することが目的であり、生命保険を解約すること自体は問題ではありません。

また、自己破産直前に生命保険を解約して解約返戻金を受けるとこと自体も免責不許可事由に該当しません。また、破産管財人の権能である否認対象行為にも該当しません。

生命保険を解約しても、破産法上の詐害行為にはならない

旧破産法下では、これが問題になる場合がありました。詳しくは後述しますが、不動産などの財産を自己破産前に適正価格であっても換価処分した場合、管財人に否認されてしまう可能性がありました。

なぜなら、不動産よりも現金の方が財産隠しは簡単にできるからです。

しかし、平成17年に破産法が改正され、適正な価格にて財産を現金かする行為は、否認対象となるケースは限定的になりました。

この結果、単純に生命保険を解約して現金化することは、否認対象行為になる可能性はほとんどなくなりました。身内に不動産を売却するなどの限定的な話を除き、保険の解約の相手は保険会社です。

保険会社からすれば、保険契約者が生命保険を解約するときに、破産する予定だから現金化して隠す意図があるかどうかを知る方法はありません。

ただし、解約返戻金の使い道によっては否認対象になる

しかしながら、問題になるのが解約返戻金を何に使ったか、という使い道です。使用用途によっては、否認対象行為となる可能性はあります。これは保険の返済金に限った話ではありません。単純に現金の使い道として否認され可能性があるのです。

当たり前の話ですが、自己破産の前に生命保険を解約して手に入れた現金を、そのまま家族の銀行口座へ振り込んでしまった場合、贈与として推定されますので、詐害行為になります。

なぜなら、無償で他人に譲渡・贈与するに該当するからです。結果、支払停止から6ヶ月前までさかのぼり、無条件で否認されてしまいます。さらに、贈与を受けた親戚が事前に破産することを知っている場合は、「詐害意思」と「受益者の悪意」に該当しますので、何年もさかのぼって(一般的には2年)、詐害行為として否認される可能性があります。

これは破産法第160条にて決められています。

また、否認権とは話が異なりますが、解約返戻金の使用用途が免責不許可事由に該当しないかはチェックされます。200万円の解約返戻気を受け取り、免責不許可事由に該当するギャンブルや射幸行為をおこない散財した場合、免責調査型の管財事件になる可能性があります。裁判所が過去の2年以内に保険の返戻金について使途報告書の提出を求めるのは、これらを調べるためです。

生命保険の解約返戻金の使い道として問題ないもの

一般的に有用の資にあたるものであれば、問題はありません。

有用の資とは、自己破産のための申立て費用、やむを得ない最低限の生活費の支出、滞納している税金の支払、病気の医療費や通院費用など、どうしても必要な支出のことです。自己破産直前に財産を現金化した場合でも、有用の資にあたる費用の支出分は、差押え対象の財産から除外されます。

自己破産の前に保険契約者を変更するのは詐害行為に該当

満期の近い生命保険について、強制解約をさえる目的で自己破産前に契約者の名義を変更したり、あるいは被保険者の健康状態が悪化している状態で死亡保険金の受取人を破産間際の人から親族へ変更したりすることは詐害行為に該当してしまう可能性があります。

時価2000万円相当の不動産を、友人知人・親族へ2000万円で売却しても詐害行為にはなりません。しかし、前述のとおり1000万円で廉価売却した場合や無料で贈与した場合は詐害行為になります。

その点、保険契約者の変更は保険受取人の変更というのは、基本的に無償でおこなうことになりますので、状況によっては詐害行為として否認される可能性があります。

では、破産よりどれくらい前ならセーフなのか?

これには明確な答えはありません。破産管財人が否認権行使は、理論上、その詐害行為がおこなわれてから最大20年以内であれば否認することが出来ます。

(否認権行使の期間)
第百七十六条 否認権は、破産手続開始の日から二年を経過したときは、行使することができない。否認しようとする行為の日から二十年を経過したときも、同様とする。

詐害行為の否認は、破産者と相手方の双方が、債権者を害することを知っていたことが、破産法第160条で条件とされています。つまり、保険名義の変更でいうのであれば、前の保険契約者と新しい保険契約者の両方が、自己破産による保険金の没収を避けるために、保険契約者の名義を変更したことが、客観的に疑われるのであれば、何年前であっても破産管財人の否認権の対象になる可能性があります。

しかしながら、1現実劇には0年も20年も前から破産を計画するということはまずありえませんので、一般的には1年~2年前以内の行為に対して、破産管財人が否認権行使する可能性が高くなります。

例外として、破産者や親族の双方が債権者を害することを知らなくて、その上、破産手続から保険金を逃す意図がまったくなかったとしても、無料の贈与行為に対しては、破産前6ヶ月前までさかのぼり、否認されてしまいます。

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そのため、弁護士に自己破産につて相談した時期、つまり支払停止時期から6ヶ月以内にした生命保険の契約者変更で、解約返戻金がある程度あったものについては否認される可能性があるということです。

適正価格をもらって換金・売却する

一般的に、適正価格での売却であれば、原則として破産管財人は否認対象行為として、売買行為を否定しません。

自己破産前に2000万円の不動産を売却して、2000万円の金銭に変換しても破産者の財産は1円も減っていませんので、債権者へは一切迷惑をかけていません。

旧破産法下では、不動産を売却して金銭に代える行為についても詐害行為になる可能性があったのです。つまり、金銭に不動産を替えてしまうと、使用したり、隠したりしやすくなるので、適正価格でも金銭にお変える行為自体は債権者を害する行為であるという考え方です。

債権者側からすれば、不動産のまま保有しておいてもらい、破産管財人が換価処分して配当した方が安心です。

しかし、資産の売却すべてが詐害行為となってしまうと、資金繰りに困った個人や会社は、金策をすることができなくなってしまい、破産するのを待つのみしか選択肢がなくなってしまいます。そのため、本当なら破産せずに済んだケースでも破産する羽目になっていました。

なので、改正破産法下では、適正価格での売買などの財産処分行為については、それを否認できうるケースが限定されることになったのです。

これは、破産法161条1項の「相当の対価を得てした財産の処分行為の否認」に規定されています。

第161条
1.破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第168条第2項及び第3項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二 破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三 相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

つまり、

  • 売却により財産が隠匿・無償贈与・消費されやすい状態になる
  • 破産者にも売買代金を隠匿・消費・無償贈与しようとする意思がある
  • 購入した人物が、破産者の思惑を知っていた

この3つの条件がそろった場合のみ、詐害行為として、その取引は否認される可能性が高くなります。

現在は、自己破産前に財産を適正価格で売却して金銭へ換価する行為については、相手とグルになって現金に換金して隠そうとしたり、不当に費消しようとしたりするような意思が認められない場合に限り、否認対象とはなりません。

適正価格での売却が否認される可能性があるのは、破産者に隠匿などの処分する意思があるということが前提になります。

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隠そうと悪だくみをしたり、明らかに債権者に迷惑がかかるような目的、たとえば、ただで贈与する、パチンコで消費するなどのために、売却して換金したりするのでなければ、通常は問題ありません。

しかも、相手方もそのことを知っていることが条件になります。適正価格での売却がン否認対象となるのは、非常に限られてくることになるでしょう。相手が民間の買取業者であれば、通常、は客が売却代金を何に使うかなど聞いてきません。そのため、知るよりもありません。

普通に住宅を不動産業者に売却したり、自動車などを買取業者に売却したりするのであれば、問題はないでしょう。自己破産前に住宅ローンの返済のために任意売却をするケースもありますが、これも詐害行為とはなりません。

ただし、親族や同居者に売却する場合は悪意が推定される

買取業者ではなく、親族・同居人などの身内に財産を買い取ってもらおうと考えた場合は注意が必要になります。この場合、前述した否認でうるケースの「購入した人物が、破産者の思惑を知っていた」の部分が法的に推定されてしまいます。

たとえば、破産者が自己破産直前に、自分の自動車を親族へ適正価格で買い取ってもらう場合で、なおかつ破産者が誰も知らない口座へ売買益を隠してしまおうと考えているとしましょう。

このようなケースでは、売却相手である親族は「自動車を売って売却代金を隠そうとしていることは知っている」と、破産管財人や裁判所に推定されるのです。

これは、破産法161条2項に規定があります。

2.前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が同項第二号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
一 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者
二 破産者が法人である場合にその破産者について次のイからハまでに掲げる者のいずれかに該当する者
イ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ロ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社又は親法人及び子株式会社が有する場合における当該親法人
ハ 株式会社以外の法人が破産者である場合におけるイ又はロに掲げる者に準ずる者
三 破産者の親族又は同居者

ただし、推定なので反対の証明をすれば覆すことが可能です。もちろんですが、知らなかったことを立証するのは非常に困難を極めます。

詐害行為をした場合免責不許可事由になる可能性は?

管財人に、詐害行為として否認されてしまった場合と、裁判官に免責不許可事由として判断された場合というのは、似ているようでまったくの別物になります。

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ただし、詐害行為により破産者自身も不利益をこうむります。それが、詐害行為が免責不許可事由の中にあるからです。

債権者を害する目的があると免責不許可事由になる

破産法252条1項にて、
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

という免責不許可事由があります。

これがまさに詐害行為に当たりそうな文言が出てきます。しかし、前述した詐害行為の要件は、債権者を害することを知っておこなった行為です。それに対し、免責不許事由の要件は「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」とあります。

この違いについてですが、一般的には免責不許可事由の場合は、詐害意思のように債権者への配当が減ることを理解していた、のみならず、積極的に「債権者への配当を減らしてやるという意図を持ち財産を処分した」という害意を指すと解釈されます。

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つまり、詐害行為は「債権者を知っていておこなった行為」、免責不許可事由は「債権者を害する目的でする行為」です。

ただし、実際の運用においてこのあたりの線引きはかなり曖昧になってしまいます。

「債権者の取り分が減ることを理解していながら、親族に贈与した」と言う場合と「債権者に没収されてしまうくらいならば、親族に譲ってしまえと考えて贈与した」というのは、結局のところ同じ意味になります。ただし、この場合には後者が債権者を害する目的があったと解釈されてしまう可能性は高くなります。

では、免責不許可事由があると必ず免責不許可になってしまうのか?

免責不許可事由がある場合であっても、本当に免責不許可になるかどうかは、金額の大きさや悪質度などにもよります。

悪質度に関してですが、たまたま詐害行為になってしまう~本当に財産を隠そうとしていたまで幅広くあります。

まず、そこまで悪質ではない場合は、裁判官から注意を受けたり、破産管財人から怒られたりしたのちに反省文などの作成が求められ、それをもって裁判官の裁量にて免責(裁量免責)を受けることが一般的です。

一方、明らかに財産を隠そうとする目的の場合など、悪質性が高い場合には高い確率で免責不許可になることでしょう。その上、詐欺破産罪が成立する可能性があります。

データ上の話ではありますが、個人の自己破産での免責不許可になるケースは、全体の1%程度です。この1%程度には自主的に自己破産の申立てを取り下げるケースも含まれています。そのため、それほど多いわけではありません。

法律を理解しておらず、詐害行為に当たる財産の贈与・譲渡をおこなってしまった場合、必ず代理人である弁護士に申告する必要があります。裁判官や破産管財人にも説明義務があります。その上で、反省している態度をしっかり見せ、誠実な態度を示すことで、免責決定される可能性があります。

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つまり、詐害行為をおこなったからといってすぐに免責不許可になるとは限らないということです。

まとめ

破産法で詐害行為として否認される行為は、

  • 本来の値段よりも安い価格で譲渡・売却する
  • 無償で他人に譲渡・贈与する
  • 適正価格をもらって換金・売却する

この3つが考えられます。

適正価格をもらって換金・売却する場合については、旧破産法では詐害行為にされていましたが、平成17年の破産法の改正に伴い、適正価格をもらって換金・売却する行為は問題なしとされています。

しかし、

  • 売却により財産が隠匿・無償贈与・消費されやすい状態になる
  • 破産者にも売買代金を隠匿・消費・無償贈与しようとする意思がある
  • 購入した人物が、破産者の思惑を知っていた

この3つの条件がそろった場合は、破産管財人が否認権行使をする可能性があります。

たとえば、住宅ローンを返済するために住宅を専門の不動産を通じて任意売却するのはセーフですが、専門の不動産を通さずに親族へ売却した場合は、適正価格であっても財産隠しを推定されてしまう可能性があるのです。

また、無償で他人に譲渡・贈与した場合、詐害行為をする意図があったとしても、なかったとしも関係なく、支払停止から6ヶ月以内におこなったものは問答無用で否認することが認められています。

たとえば、保険金の名義変更を自己破産の6ヶ月前におこなった場合が、無償で他人に譲渡・贈与すると判断されますので、その行為は否認されます。

そして、詐害行為をおこなった場合、免責不許可事由に該当するので、自己破産で免責許可が下りないというわけではなく、詐害行為をおこなったとしても、悪質性がないと判断されれば、裁判所の裁量にて免責許可を得ることができます。しかし、悪質性が高い場合は、免責不許可どころか詐欺破産罪が成立する可能性があります。

弁護士に相談して以降は、財産の名義変更などはするべきではありません。

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