自己破産をして手元に残せる自由財産と残せない破産財団とは?

自己破産の手続きで「管財事件」となる場合、所持している高額な財産の多くを差押えられてしまい、換金処分されます。換金処分された財産は債権者に配当されて、借金の弁済にあてられます。ただし、自己破産をしたとしてもすべての財産が没収されるわけではありません。

今回は処分される財産と処分されない財産について紹介をします。

自己破産の種類

自己破産は手続きにより、

  • 同時廃止事件
  • 管財事件

この2つに分けることができます。

同時廃止事件の場合は、財産の清算手続きというのはありません。そのため、同時廃止事件では、すべての財産を保有し続けることが可能です。そして、管財事件は原則として所有している財産は破産財団となり、差押えの対象になります。

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同時廃止事件の場合はすでに処分できる財産がないので、そのため、財産の清算手続きがないというよりは、清算手続きをすることができないというのが正しい表現です。
自己破産で管財事件となった場合、破産者の財産は、

  • 破産財団
  • 自由財産
  • 新得財産

この3つの種類に分けることができます。

新得財産については後述しますが、新得財産は自由財産の1つに分類されます。

破産財団と自由財産と新得財産

自己破産手続開始決定時に所有している財産は、破産財団と自由財産に分けることができます。

破産財団とは、破産管財人により換金処分される対象となる財産です。一方、自由財産は没収されることなく、自己破産手続完了後も保有し続けることのできる財産です。

自由財産として規定されるものの1つではありますが、自己破産手続開始後に取得した財産は、新得財産となります。新得財産は自己破産手続に関係なく破産者が所有し続けることができます。

つまり、

  • 破産財団:自己破産手続開始時にすでに所有している財産で処分の対象
  • 自由財産:自己破産手続開始時にすでに所有している財産で処分対象外
  • 新得財産:自己破産手続開始時後により新しく取得した財産で処分対象外

破産財団

破産手続開始時にすでに破産者が所有七得る差押え可能な財産が破産財産に組み込まれます。破産財産は破産管財人の管理のもとで換金処分されます。換金処分された財産は、債権者に弁済または配当されます。

破産法第34条(破産財団の範囲)
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

原則として、

  • 自己破産時に所有している財産はすべて破産財団となり、差押えの対象となる
  • 例外として一部に自由財産が存在する

つまり、原則として財産は破産財団となり、一部だけ例外として自由財産となります。

法人ではなく個人が破産した場合、自己破産をしても、破産者の方はその後の生活があります。そのため、破産者の有するあらゆる財産を処分してしまうと、自己破産をして免責許可が下ったとしても、破産者は生活が困窮する可能性が非常に高くなります。

それでは、債務者の経済的な更生をはかる破産法の目的や理念に反してしまいます。

自己破産の場合には、生活に必要となる最低限度の財産や破産手続状換金できない財産については、自己破産をしても処分しなくてもよいとされています。

自己破産をしても処分しなくてもいい財産を破産者が自由にできる財産という意味で自由財産と呼びます。

自由財産

破産法の第34条第3項、第4項に自由財産が規定されています。

[破産法の第34条第3項、第4項]
第3項:第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。

  • 一:民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号 に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
  • 二:差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項 (同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。

第4項:裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

自由財産にあたるかについては、破産法により規定されています。

つまり、

  • 新得財産
  • 差押禁止財産
  • 99万円以下の現金
  • 自由財産の拡張がなされた財産
  • 破産管財人によって破産財団から放棄された財産

これらが自由財産となります。

新得財産

破産法では、破産財団に組み入れられる財産は、破産手続開始に破産者が有している財産でなければならないとされています。破産手続時を基準に破産財団に組み入れを決定することを固定主義といいます。

つまり、破産手続開始後に破産者が新たに取得した財産は破産財団に組み入れることができません。破産者が破産手続開始後に新たに取得した財産が「新得財産」です。

破産者の方が破産手続開始決定後に取得した財産は、自己破産をしても換価処分の対象にはなりません。

ちなみに、外国では膨張主義方式を採用しているところもあり、これは破産手続開始時を基準とせずに、新得財産も破産財団に組み入れることができます。

差押禁止財産

強制執行の1つである差押えをすることができない財産があります。これを差押禁止財産と呼びます。破産財団に組み込むことが可能な財産とは、差押えが可能な財産である必要がありますので、差押え禁止財産も自由財産になります。

つまり、差押禁止財産を破産手続開始時に破産者の方が有していたとしても、換金処分の対象にはなりません。

そして、差押禁止財産には、多くのものがあります。主なものとして、民事執行法に規定されています。

民事執行法の規定では、

  • 差押禁止動産
  • 差押禁止債権

これらにわけることができます。

差押禁止動産

差押禁止動産は、民事執行法第131条にて定められています。

[民事執行法第131条(差押禁止動産)]
第百三十一条  次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

  • 一:債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
  • 二:債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
  • 三:標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
  • 四:主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
  • 五:主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
  • 六:技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
  • 七:実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
  • 八:仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
  • 九:債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
  • 十:債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
  • 十一:債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
  • 十二:発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
  • 十三:債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
  • 十四:建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

漫画やドラマのように役人が家に押しかけて家財道具から金庫に差押のシールを貼って押収するということは、自己破産をしたとしても起きません。

税金の滞納処分と自己破産のイメージが混ざっている方がいますが、税金の滞納を長期間続け、催告も無視し続けると動産執行といい、家の中に踏み込まれて家財などを差押えられてしまうことがあります。

税金の滞納でおこなわれるのは、行政処分となり、行政による強制処分になりますので、自己破産手続とはまた別の話となります。

差押禁止債権

差押禁止債権については、民事執行法第152条やその他に記載されています。

[民事執行法第152条](差押禁止債権)
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘

  • 一:債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
  • 二:給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権

2:退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3:債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

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つまり、差押禁止債権とは、差押え禁止されている債権であり、生活に必要となる債権が差押禁止債権とされている場合が多くなります。

99万円以下の現金

現金についてですが、99万円以下の現金は無条件で保有することが認められています。現金は紙幣や硬貨のことであり、銀行の預金口座などは含まれません。

ただし、大阪地裁の場合、普通預金も現金相当物として扱われるのですが、その他の裁判所では紙幣や硬貨などの現金だけが「現金」として解釈されます。
また、東京地裁の場合、現金33万円以上所持していると20万円を支払う必要のある、少額管財事件となります。

自己破産前になるべく多くの現金を持っておいた方がいいという意見があり、これは正しいのですが、自己破産直前に現金化したものは現金としては定義されず、裁判所により現金ではないと否定さえる可能性があります。

弁護士に自己破産をお願いした後に、預金口座や車などの財産を現金化した場合、裁判所には現金として認めてもらえない可能性があります。そのため、素人判断で現金化をしない方がいいでしょう。

ちなみに、現金99万円まで保有できる理由についてですが、これは、破産法第34条第3項により決められています。

破産法第34条第3項

第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。-民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭

民事執行法131条第3号を見ましょう。

民事執行法131条第3号

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
三 標準的な世帯の2月間の必要性経費を勘案して政令で定める額の金銭

最後に政令(民事執行施行令)第1条をみましょう。

政令(民事執行施行令)第1条

民事執行法第131条第3号の政令で定める額は、66万円とする。

これらのことから、「標準的な世帯の2月間の必要性経費を勘案して政令で定める額の金銭」とは「66万円の現金」であり、この額に2分の3を乗じた額、つまり「99万円の現金」というのは差押え禁止財産となっているわけです。

つまり、自己破産をしても99万円以下の現金は自由財産となり、処分をする必要がなく、破産者は所持することができるといわけです。

自由財産の拡張がなされた財産

前述してきた自由財産については「本来的自由財産」と呼ばれており、自由財産となることが確実な財産です。

しかし、本来的自由財産を残しただけでは、破産者の最低限度の生活を維持できない場合があります。そこで、本来的自由財産ではない財産であっても、裁判所の決定によって自由財産として取り扱うことができるという制度が設けられています。

この制度が「自由財産の拡張」と呼ばれています。

本来的自由財産ではない財産でも、自由財拡張を認められた財産については、自己破産をしても処分しなくてもよいということになります。

また、裁判所により個別の事情にかかわらず一律に自由財産の拡張が認められる財産の基準というものが定められている場合もあります。

一般的に自由財産の拡張として認められる財産は下記のものがあります。

  • 預貯金・定期預金
  • 保険の解約返戻金
  • 自動車
  • 賃貸部屋の敷金返還請求権
  • 退職金債権・退職金見込額
  • 電話加入権
  • 過払い金返還請求権
過払い金返還請求権については、大阪地裁では自由財産の拡張が認められています。他の地方裁判所でも、金額やその他の条件によって認められる可能性があります。

自由財産の拡張範囲としては認められるかは、裁判所の運用により異なるので注意が必要です。また、上記の財産であればすべて自由財産の拡張として認められるわけではなく、裁判所の基準があり、これも裁判所の運用によって異なります。

自由財産の拡張には20万円基準と99万円基準があります。

20万円基準と99万円基準

20万円基準は、財産の種類1つ1つについて、20万円を超えているかどうかにより判断される基準です。20万円を超えるものは、自由財産の拡張が認められず、処分対象となります。

たとえば、自動車の価値が20万円以下であれば自由財産の拡張が認められ、そのまま保有することができます。しかし、40万円の自動車の場合は20万円を超えていますので、自由財産としては認められません。

99万円基準ですが財産1点1点の金額に関係なく、「合計額が99万円を超えているかどうかで判断されます。この基準は現金も含まれます。この基準は大阪地裁で採用されています。東京地裁でも、99万円基準に近い形で運用されています。

破産管財人によって破産財団から放棄された財産

[破産法第78条第2項](破産管財人の権限)

第78 条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
2:破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
十二:権利の放棄

破産手続において、自由財産に該当せず、破産財団に組み入れられることになった財産であっても、処分費用が高い、買い手がなかなかつかないという理由から、簡単に換価処分できない財産があります。

このような場合、破産管財人は、裁判所から許可を得て、換価処分が不可能ないし困難な財産を破産財団から除外する措置をとります。これが、破産財団からの放棄です。

破産財団から放棄された財産は、破産財団所属の財産ではなくなりますので、以降は自由財産として扱われることになります。破産財団から放棄された財産も処分しなくていいとなります。

まとめ

自己破産をしても残すことのできる財産については「自由財産」と「新得財産」になります。処分の対象となる財産は「破産財団」となります。

自由財産の中に新得財産は含まれますがそれ以外に、

  • 差押禁止財産
  • 99万円以下の現金
  • 自由財産の拡張がなされた財産
  • 破産管財人によって破産財団から放棄された財産

などが自由財産となります。

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