自己破産で迷惑をかけるなら離婚すべき?自己破産と離婚の関係

自己破産をして配偶者に迷惑をかけるくらいならば、離婚してしまった方がいいのかもしれないと考える方もいるでしょう。

しかし、離婚しても特にメリットはないかもしれません。

また、実際に離婚するにしても離婚の時期や財産分与の額によっては免責を得ることができなくなる可能性が高くなるので注意したいところです。

自己破産が原因で離婚を考えているのであれば、計画的にすすめる必要があるので注意しましょう。

自己破産するくらいなら離婚した方がいいのか?

夫が作った借金が原因で自己破産することになった場合、妻へこれ以上の迷惑をかけたくないので離婚した方がいいのでは、と考える方がいます。

しかし、自己破産は本人の問題になりますから、配偶者には関係がありません。ただし、現実の運用として自己破産すると妻に迷惑をかける可能性が高くなります。

特に、自己破産の際に離婚するとメリットになることは一切ありません。それどころか、自己破産前の離婚は偽装離婚を疑われる可能性が高くなります。そのため、自己破産を理由にした離婚は慎重になるべきです。

自己破産しても配偶者には迷惑がかからないの?

夫婦でも、夫の財産と妻の財産は別のものとして考えます。つまり、夫が自己破産したとしても、妻の所有する財産には原則として影響がありません。

自己破産をすると、一般的には20万円以上の自分名義の財産を失うので、自分名義の不動産や自動車は高い確率で没収されることになります。自動車に関しては20万円以上の価値がなければ自由財産として所有し続けることが可能です。しかし、ローン返済中の自動車などは引き揚げられて換価処分されてしまいます。

そして、夫が自己破産をしても自分名義の財産は前述のように没収されますが、妻名義の財産は換価処分の対象にはなりませんので、失うことはありません。

また、自己破産すれば信用情報機関に個人信用情報が登録されます。5年~10年は個人信用情報に傷が残りますので、その間、新たな借入やクレジットカードの新規作成が不可能になります。しかし、この個人信用情報に傷がつくのは自己破産をした夫だけであり、妻の個人情報には影響はありません。そのため、妻名義での借入やクレジットカードの作成は問題なくおこなえます。

仮に、自己破産した夫が、クレジットカードを必要とするなら、妻の家族カードを利用すれば問題ないわけです。

現実問題、夫の自己破産により妻に迷惑をかけることは多い

夫と妻の財産は別々であると言いましても、現実問題、夫の自己破産により妻に迷惑がかかることは多くなります。

よくあるケースとしては、夫名義の住宅に妻が住んでいる場合です。住宅は換価処分対象なので、現在住んでいる住宅から引っ越ししなければなりません。そのため、妻も生活基盤を失ってしまうわけです。

また、夫名義の自動車を妻が使用していて、その自動車が20万円以上の価値があるのでしたら、換価処分の対象になります。また、妻名義であっても自動車ローンの支払いを夫があからさまにおこなっている場合、それは夫の財産と判断されて没収されてしまいます。

このように、夫が自己破産することで、妻の生活にも大なり小なり影響が出てくることは、よくあるケースになります。

夫の連帯保証人に妻がなっている場合は要注意

夫がローンを組んだり、そのほかの借金をしたりするとき、妻が連帯保証人になるケースは多くなります。妻が夫の借金の連帯保証人になっていますと、夫の自己破産が妻に直接的な影響を与えることになるでしょう。

つまり、夫が自己破産すれば夫の借金は帳消しになります。夫は借金の支払義務がなくなるのですが、連帯保証人の債務は帳消しになりません。そのため、もし夫が自己破産すれば、債権者は連帯保証人である妻に借金を返済するように要求します。

夫の代わりに妻に借金の返済義務が出てくる上、その借金は「期限の利益を喪失」していますので、原則、一括払いでの返済を求められます。結果、妻に大きな迷惑がかかります。具体的には、妻も自己破産することになります。

妻が連帯保証人なら一緒に自己破産することを検討

妻が借金の連帯保証人になっている場合、夫が自己破産するときに、妻も一緒に自己破産することがベストな選択です。妻も自己破産することで、妻は借金の取り立てにあわずに済みます。

ちなみに、妻名義の財産が特にないのであれば、妻が自己破産してもそれほど大きな問題はないように思うかもしれません。しかし、妻が自己破産すれば妻の個人信用情報に傷がつきますので、妻も5年~10年の間、新規で借入することができなくなり、クレジットカードを作ることもできなくなります。

夫婦そろって自己破産するのであれば、自己破産後しばらくの間、夫婦双方ともにローンやクレジットカードを作ることができなくなるので、それは覚悟しておいた方がいいでしょう。

自己破産が離婚原因になることがある?

自己破産すると離婚をしなければいけないと思っている人がたまにいます。しかし、自己破産は、法律上、離婚原因とはなりません。

つまり、夫が自己破産したというだけで離婚することは基本的には不可能です。逆に自己破産したからといって離婚しなければならないということもありません。

自己破産すれば自分が離婚を言いださなくても、妻の方から離婚を請求する可能性があります。夫が自己破産しても、それがただちに離婚原因になるわけではないのは前述しました。しかし、妻がどうしても離婚したいと裁判を起こした場合、自己破産したことが民法上の「婚姻関係を継続し難い重大な事由」になると判断されれば、離婚に応じなければなりません。

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現実問題、自己破産が離婚理由になるケースは稀です。借金癖がなかなか直らないような場合、離婚という結果になるケースがなきにしもあらずと考えた方がいいでしょう。

自己破産をしても養育費の支払義務はなくならないので注意が必要

離婚の際に、子供がいて、妻が子供を引き取った場合、夫は養育費を支払わなければなりません。もし、自己破産をきっかけに離婚したとしても、夫は養育費の支払義務を免れることはできません。

養育費は非免責債権に分類されて、自己破産したとしても、その他の借金とは異なり、支払義務の免除にはなりません。なぜなら、親である限り負担しなければならないものなのです。そのため、自己破産をした後も支払義務は残ります。
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しかし、養育費は事情の変更により減額が認められていますので、自己破産後にどうしても払えないようであれば、家庭裁判所に減額調停を申立てる手続きをすることにより、減額することが可能です。

自己破産前の離婚は偽装離婚を疑われる

妻に迷惑をかけないために自己破産をする前に、妻に自分名義の財産を譲ると考える方もいるでしょう。

ただ、自己破産する前に財産分与をしてしまうと、財産隠しをした判断されて、妻への財産分与が取り消されてしまう可能性があります。妻に対して慰謝料を支払った場合も、債権者平等の原則から取り消しになる可能性があります。

つまり、離婚を自己破産前にすることは、偽装離婚を疑われてしまっても仕方ないということです。

さらに、妻が借金の連帯保証人になっている場合、離婚したとしても、婚姻関係と連帯保証人の契約はまったく別次元の話になりますので、連帯保証人から解放されるということはありません。離婚の有無に関係なく夫が自己破産をしたら連帯保証人の妻へ借金の請求がいくことになります。

自己破産するのであれば、離婚しても妻にかかる迷惑の度合いは変わらないということです。

自己破産前の財産分与について

夫の借金が原因で離婚に至る夫婦は稀ですが、前述のとおり、借金や自己破産は法律上、直接の離婚原因にはなりません。しかし、それが発端となり夫婦関係が破たんする場合、協議離婚となります。

自己破産の前に財産分与したとしても、それが認められる通常の範囲であれば、詐害行為にはなりません。破産管財人や裁判所によって否認されることは原則としてありません。

しかし、自己破産の前に大きな財産が動くので、当然ですが、裁判所や破産管財人は、財産分与の内容に問題がないか厳しく注視し細かく事情の説明を求められのが現状です。

破産管財人は債権者の財産を確保するのが仕事ですから、多額の財産が夫から妻へ移動されている事実を「財産分与ならOK」とはなりません。

また、悪質な場合、自宅や財産を守るため偽装離婚して財産を妻へ逃がそうとする破産者もいます。財産分与を装っておこなわれた実質的な財産処分行為は、詐害行為になりますが、両者を明確にどこからどこまでがセーフであり、どこからどこまでがアウトなのか、明確には決まっていません。

ちなみに、詐害行為とは、破産者が自分の責任財産を減らす行為のことです。主に、自分の財産を他人へ譲渡したり、いちじるしく安く売却したりする行為のことです。たとえば、自己破産の前に、2000万円の不動産を他人に500万円で廉価売却したり、無償で贈与したりする行為が詐害行為に該当します。

原則として、詐害行為は債権者を害することを知っていたことが条件であり、無償で贈与した場合、債権者を害する目的の有無に関係なく、自己破産手続開始の6ヵ月前にさかのぼり、その譲渡行為は否認されます。

財産分与で認められる「通常認められる範囲」とは?

通常認められる範囲、といいましても、財産分与の金額については法律により明確な基準はありません。

民法768条の「当事者双方がその協力によって得た財産の額、その他一切の事情を考慮して、分与の額および方法を定める」との規定があるだけです。

そのため、家庭裁判所などで離婚調停をするときには、夫婦の財産への貢献度は平等であると判断して2分の1ずつとする場合が一般的です。

ごく一般的な家庭であれば、夫が離婚にあたり財産のうち2分の1を財産分与することは詐害行為にはなりません。ただし、夫が会社の経営者の場合は話が変わります。会社の経営者であれば収入が多くなります。
また、妻が専業主婦で夫の事業にほとんど関与していない場合、財産への寄与率は一般家庭より低く見積もられます。つまり、2分の1の財産分与はありえません。

自己破産前に住宅を財産分与する場合

財産分与の対象として、夫名義の住宅を妻に譲ることも多くなります。そもそも、夫が自己破産に陥る状況なので、お金などがなく、住宅だけは妻へ残したいと考える方もいるかもしれません。

この場合、残りの住宅ローンの負担も合わせて、妻に住宅を譲るのであれば、住宅の時価から住宅ローンの残高を指し引いた額が、夫の財産の2分の1程度までなら財産分与を基本的には問題ありません。

住宅ローン残高がまだ多く残っていて、オーバーローン状態(住宅ローンの残債務>住宅の価値)の住宅であれば、破産財団として価値はありませんので、財産分与として登記移転しても否認対象にはなりません。ただし、オーバーローン状態なので、銀行が名義変更の許可を出さない限り、名義変更することは不可能です。

では、住宅に財産価値があり、しかもしれが破産者の唯一の財産である場合には、財産分与で住宅を譲るのは問題となる可能性は非常に高くなります。妻が頭金の捻出や住宅ローン返済の多くをおこなっていたなどの事情があれば話は変わりますが、そうでない限り、妻は財産分与で住宅を手にする根拠がありません。

そのため、所有権の2分の1を妻名義に移転すればいいのですが、現実問題、これから離婚する夫と住宅を共有持分にするのはおすすめできません。夫が自己破産をするというのであれば、なおおすすめできません。

ただし、理屈上問題ないというレベルの話であり、破産管財人に何か言われてしまう可能性が高くなります。全部が否認されるケースは稀ですが、一部の返還を求められる可能性はあるでしょう。

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ただ、この問題はかなり複雑であり、弁護士などへ相談して考えていくことをおすすめします。

慰謝料や扶養の意味合いを兼ねた財産分与(清算的財産分与)の場合

借金以外にも、不倫や浮気、DVなど夫に法的な離婚原因となる有責自由がある場合、妻は離婚時に夫に慰謝料を請求することができます。

慰謝料的財産分与というのですが、慰謝料に相当する分も含めて、実際の貢献割合より多めに財産分与することです。

また、扶養的財産分与というのもあり、これは離婚後の妻の当面の生活のことを考えて実際の貢献よりも多めに財産分与することを指します。

これらの財産分与は、本来、夫婦間で納得さえすることで、夫が妻へいくら支払っても何の問題もありません。どのような割合で財産分与するのは、そもそも当事者が自由に決めていいからです。

しかし、夫が多額の借金を抱え、債務超過に陥っている場合は、話が異なってきます。

夫婦の共有財産を2分の1ずつに配分する、財産分与は、民法で認められた財産分与件そのものなので、詐害行為には該当しません。

慰謝料的要素や扶養的要素は便宜上、財産分与についているだけであり本来の財産分与とはまったく別の請求権になります。

そのため、夫は他の債権者よりも優先して妻に慰謝料を支払った場合、詐害行為や偏頗弁済に該当しまい、自己破産時の免責許可を得ることができません。

なぜなら、慰謝料請求権は、本来ただの財産上の権利(債権)になり、自己破産をする上では債権者は同列に扱う必要があるからです。

慰謝料や扶養の性質を含んだ財産分与につきましては、額によっては過大な財産分与と判断されてしまい、一部が否認されてしまいます。

民法上では、財産分与の額・方法の算定のついては家庭裁判所に判断を委ねた場合、その他、一切の事情を考慮して決めると定められています。

なので、慰謝料の要素を含む財産分与が不可能というわけではありません。あくまでも、多すぎると問題になるという話です。

もし、破産管財人が多すぎるとして否認の訴えをおこされて裁判になった場合、財産分与の額が妥当であるこの主要・立証責任は財産分与を受け取った妻側にあります。

そのため、相当な範囲であることを説明・立証できないのであれば、過大であると破産管財人に判断されて否認されることになります。

まとめ

自己破産をする場合、離婚をしなければならないと考える方がいますが、自己破産したことが原因で離婚する必要はありません。

問題になるのが、離婚時の財産分与です。自己破産前に財産分与をすると場合によっては財産隠しと判断される可能性があります。そのため、自己破産する前の財産分与についてはあまりおすすめされた手段ではありません。

また、妻への慰謝料なども破産管財人が過大と判断した場合、一部返済を要求される可能性があります。

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離婚をしたとしての配偶者へ迷惑はかかりませんが、配偶者が連帯保証人になっている場合は、自己破産すると配偶者へ請求が行くことになります。期限の利益を喪失していますので一括返済が必要になります。離婚したとしても、連帯保証人が解除されるわけではありませんので注意しましょう。

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