ということで、今回は自己破産をすると家族にどのような影響が出るのか、そして、家族に内緒で自己破産をするのが難しくおすすめできない理由を紹介していきます。
目次
自己破産とその影響
自己破産をした本人と自己破産をした人物の家族への影響を中心に紹介をしていきます。
誰にどのような影響があるのかを見ていきましょう。
自己破産者本人への影響
財産の処分
自己破産をおこなった本人に、本人名義の財産がある場合は、すべて破産財団として破産管財人により処分されて換金されてしまいます。
[aside type=”boader”] 処分対象の財産は、- 99万円以上の現金
- 銀行口座に20万円以上の貯金
- 20万円以上の価値のある自動車
- 20万円以上の解約金がある保険
- 20万円以上の価値がある有価証券など
- 債務者名義の持ち家や土地
これらを持っていると処分・換金されてしまいます。[/aside]
職業の制限・資格の制限
自己破産の手続き中は「破産者」となり、就くことのできない仕事があります。また、公法上・私法上の資格制限を受けてしまいます。
免責許可の決定を裁判所が下し「復権」をはたすことで、職業の制限・資格の制限は解除されるのです。
[aside type=”boader”] 就くことのできない仕事は、- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 弁理士
- 司法書士
- 不動産鑑定士
- 土地家屋調査士
- 古物商
など多くの仕事に就くことができません。[/aside]
転居や旅行の制限
自己破産の手続き中は、引っ越しは国内外の長期旅行などには制限をかけられます。もし、旅行をする場合は裁判所の許可を得る必要があります。
このため、旅行業者も就くことのできない仕事の1つになります。
転居や旅行の制限についても、免責を受け復権をはたすことで、解除されます。
ブラックリスト入りする
自己破産というのは金融事故になりますので、5年~10年間は新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができなくなります。
ブラックリストという自己破産者の名簿は存在しませんが、信用情報機関に照会することで、自己破産もしくは何らかの金融事故を起こしていることがわかります。
[aside type=”boader”]
信用情報機関は、
- CIC
- JICC
- KSC
この3社があります。[/aside]
CICでは、自己破産をしたとしても、自己破産をしたという記録ではなく単純に3ヶ月以上連続して滞納したという記録になります。そのため5年間はCICに加盟しているクレジットカード会社などで新しくクレジットカードを作ることは不可能です。
JICCも5年で自己破産をした記録は抹消されますが、KSCは自己破産後10年間、自己破産をしたという情報が残り続けます。ただ、KSCはクレジットカードより、住宅ローンなどを銀行系のローンの際に影響がある信用情報機関であり、そこまで重要性は高くありません。
また、5年経過してブラック状態が終了したとしても、クレジットヒストリーというクレジットカードやローンの利用状況が5年間空白になってしまいます。そのため、クレジットカードの申込みをすると金融事故を起こしたのではと疑われてしまい、クレジットカードを手に入れるのが難しくなるでしょう。
さらに、自己破産時に免責にしたクレジットカード会社では、社内永久ブラックになりますので、二度とクレジットカードを作ることができなくなります。
自己破産者の家族への影響
自己破産をする上で気になるのが、家族に何かしらの不利益が発生するということです。
債務者が自己破産をしたにも関わらず、連帯責任で家族にも何かしらの影響があるとなっては、簡単に自己破産を決断することはできないでしょう。
結論からいいますが、家族には原則として迷惑はかかりません。
[aside type=”boader”] 前述した自己破産者本人に関する、- 財産の処分
- 職業・資格制限
- 転居や旅行の制限
- ブラックリスト入り
などを受けることもないのです。[/aside]
もちろん、連帯保証人や保証人になっていなければ、配偶者や子供、親の借金の返済義務というものは発生しませんので、自己破産をしたからといって家族が代わりに返済をする必要はありません。
ただ、自己破産者名義の持ち家に住んでいる場合は、家を売却しなければなりませんので、その点は影響を受けてしまいます。しかし、この点を除けば、家族であるからといって不利益をこうむるということはないのです。
自己破産者の財産を処分しなければならない
自己破産者が所有している財産は、すべて破産財団となり破産管財人により処分されて換金されます。そのため、自己破産者名義の持ち家に一緒に住んでいる場合は、持ち家を手放さなければなりません。
逆にいえば、自己破産者名義ではなければ持ち家を手放す必要はないということです。
家族、たとえば妻が自己破産をしても、持ち家の名義が夫の名義であれば処分の対象にはなりません。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]夫が自己破産をした場合、妻の名義の財産は処分の対象外になります。しかし、全く収入の無い妻が購入した妻名義の財産については、差押えの対象になります。[/voice]たとえば、専業主婦の妻の名義で購入した自動車などは、実質的には夫の所有物と判断されて破産管財人により処分されてしまう可能性があるということです。
ただし、初年度登録から7年以上経過した古い自動車は価値が低くなっていますので手放す必要がなくなります。
では、共有名義の場合は?
では、持ち家が共有名義の場合はどうなるのでしょうか。
住宅ローンが残っている場合は簡単です。
[aside type=”boader”] たとえば、夫が自己破産をした場合、妻が夫の分も支払えば持ち家に住み続けることが可能です。不可能であれば、
- 競売
- 任意売却
により持ち家を処分するしかありません。[/aside]
では、住宅ローンがなく、夫婦の共有名義の住宅の場合であり、持ち分割合が5:5であるのならばどうなるでしょうか。
[aside type=”boader”] たとえば、妻が自己破産した場合は、- 妻の共有持ち分を、夫が破産管財人から買い取る
- 破産管財人の許可を得て持ち家を任意売却する
- 共有持ち分が競売になっても放置する
この3つの選択肢があります。[/aside]
そして、一般的に競売になったとしても買手がつきません。
[aside type=”boader”]なぜなら、半分は夫の住宅になりますので、夫を追い出すことが法律的に不可能だからです。そのため、破産管財人が破産財団から放棄して持ち主である妻のもとに戻ってきます。[/aside]
しかし、不動産業者の中には購入する業者も存在します。
これら業者が購入した場合、裁判所へ不動産業者が共有物分割訴訟を提起します。すると、強制的に裁判所が競売にかけて、売買益を2分割し夫と不動産業者へ支払います。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]つまり、持ち家に住む場合は、破産管財人から妻の共有持ち分を買い取るというのが安全であるといえます。[/voice]家族のクレジットカード等が作れない可能性
クレジットカード会社にもよりますが、家族に自己破産者がいる場合は、家族がクレジットカードを作るのを断られるというケースがあります。
クレジットカード会社により、対応が異なりますが、一応、このようなリスクがあることは覚えておきましょう。
子供への影響
進学や結婚などに影響はあるのか?
自己破産をすることで、子供になんらかの影響、たとえば、進学や結婚の際に自己破産者の家族だからということで、何らかの不利益をこうむるのかなどが気になるところです。
学費面では不利益をこうむる可能性はありますが、そのほかは、ほぼ影響はありません。
子供の進学や就職に対してですが、基本的に家族に自己破産者がいようがいまいが、調査され、自己破産者の子供だから不許可ということは原則としてありえません。
[aside type=”warning”]ただ、就職の審査基準についてはブラックボックスであり、たとえば、親が自己破産をしたときに迷惑をかけた金融機関へ就職をする場合、不利になる可能性が否定できないのもまた事実です。親の属性により就職の可否が決まるというのは本来禁止されているのですが、そのような可能性も否定はできないのです。[/aside]あくまでも特殊な例であり、そこまで考える必要はないでしょう。
保険の解約と学費
保険の返戻金が20万円以上ある場合は、財産になりますので、破産財団なとなり解約して借金の返済に充てる必要があります。
特に子供の学資保険の場合では解約してしまうと「お祝い金」「入学祝い金」などの給付がなくなります。
そのため、子供を大学まで進学させることを考えている場合、奨学金に頼らざるをえません。その場合、自己破産者が保証人になることはできませんので注意をしましょう。
[aside type=”boader”] また、教育ローンという方法がありますが、こちらも自己破産者が申込んでは審査に通らない可能性が高くなります。自己破産者の家族が申込みをすれば特別問題とならず、審査に落ちるケースは少ないでしょう。[/aside]しかしながら、家族に自己破産者がいる場合はローンや融資を実行しないケースもあります。これも金融機関の方針により異なりますので、そこまで気にするべき問題ではありません。
自動車ローンの保証人
子供が就職する際に、地方の場合では自動車でも通勤が一般的です。そのため、自動車ローンを組まなければなりませんが、就職して3年程度たっているのであれば保証人は不必要ですが、1年未満の場合、親が保証人になり融資をしてもらうというのが一般的です。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]しかし、自己破産者の場合、自己破産をした記録が信用情報機関から抹消されるまで保証人になることができないので、注意をしましょう。自己破産者をしていない親や親戚が保証人になるという手段もありますので、そこまで問題にはならないと考えます。[/voice]家族が連帯保証人・保証人になっている場合
自己破産というのは、原則として自己破産の申立をした本人のみに適用されます。そのため、配偶者や子供といった家族に不利益が及ぼされることはありません。
[aside type=”boader”] しかし、家族が自己破産者の連帯保証人になっている場合、債権者は自己破産者から取立てができなくなる代わりに、連帯保証人へ取立てをおこないます。その結果として、家族に迷惑がかかることや、家族も自己破産をしなければならないということもあります。[/aside] [voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]つまり、自己破産をしなければならない状態で、家族に連帯保証人がいる場合は同時に自己破産をすることで、借金は免責となります。[/voice]
配偶者を内緒で保証人にした場合
たとえば、妻が夫に内緒で、夫を保証人にするとします。この場合、夫と債権者の間に保証契約が締結されているわけではないので、夫には保証人としての義務が生じません。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]保証契約については、債権者と債務者(妻)との契約とは別に、保証人と債権者との間で締結されなければ効力を発揮しないのです。[/voice]家族に内緒で自己破産をすることは可能なのか?
破産手続開始申立を裁判所へ申立てをしたとしても、裁判所や弁護士が家族に自己破産をする旨の連絡をすることはありません。
また、債権者からも家族へ連絡が行くということもないのです。
同居する家族の源泉徴収票や給与明細などの資料の提出をしなければなりません。これを家族に内緒で集めることができれば、家族にばれることなく自己破産をすることは十分に可能です。
官報にも載りますが、官報を熟読する一般人は圧倒的に少数なので、官報に名前が載ることでばれる可能性というのもないでしょう。
自己破産をしても家族がこうむるデメリットもありません。
もちろん、連帯保証人になっている場合や持ち家を持っている場合は家族に影響がありますが、それを除けば自己破産をしたところで、家族に不利益が発生することはなく、家族に内緒で自己破産をすることは可能です。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]ただ、同時廃止の場合でも免責許可が下りるまで6ヶ月間はかかります。その間、家族にばれないのかと考えながら過ごす、精神的ストレス、そして、家族の信頼関係に影響がある可能性がありますので、しっかりと話し合って決めた方が、将来の不和の原因にはなりにくいのではないのでしょうか。[/voice]債権者が家族に取立てにくる可能性
[voice icon=”/wp-content/uploads/woman_tag.png” name=”woman” type=”r”]自己破産をした後、家族に借金の取立て業者が来ることは絶対にないといえるのですか?[/voice] [voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]連帯保証人や保証人ではない限り、借金を返済する必要はありません。貸金業法という法律で禁止されていますので安心してください。[/voice] [aside type=”boader”] 自己破産をした場合、連帯保証人や保証人になっていない家族に借金の返済義務があるのかといえば、一切ありません。親兄弟子供であっても、連帯保証人や保証人になっていない限り、借金を肩代わりする必要なんてものはありません。[/aside]それが自己破産をした場合であっても、借金の請求が連帯保証人や保証人以外の家族に行くことは絶対にありえません。
貸金業者が支払義務のない親族へ支払いを請求するということは、貸金業法で禁止されています。これは、クレジット債権についても同様で、割賦販売法に関する経済産業省通達(割賦販売法(分割分野)に基づく監督の基本方針)にて禁止されています。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]つまり、借金を支払う義務のない人物への取立ては絶対にしてはいけないというものです。[/voice]また、支払義務の無い親族が取立てを受けてしまった場合は、債権者へ止めるように警告する文書を内容証明にて送付すれば問題ないでしょう。それでもなお支払請求をする場合は、監督行政庁に行政処分や苦情の申立てをおこなうとともに、警察に対して貸金業規則法違反にて刑事告訴をすることができます。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]個人的に対処をおこなうのは難しいので、弁護士へ依頼をして適切に対処してもらうのが理想的な対処方法であると考えます。[/voice]まとめ
自己破産をしたからといって家族に迷惑がかかるということは原則ありません。
自己破産をした者の名義の財産を処分されてしまうので、持ち家が自己破産をした者の名義であれば、家を失うことになります。しかし、自己破産をした者以外の名義であれば、その財産には一切手を付けられることはありません。
また、子供の進学や就職、結婚についても自己破産をしたからといってなにかしら不利益になるということはないでしょう。特殊な例として自己破産をして迷惑をかけた金融機関に子供が就職する場合、社内のデータベースに情報が残っていますので、不採用になる可能性が0ではありません。本来は禁止されているので、特殊な例です。
[aside type=”boader”] 家族に迷惑がかかる点としては、家族が連帯保証人や保証人の場合です。自己破産をすると請求が連帯保証人や保証人である家族へ行くことになりますので、連帯保証人や保証人である家族も自己破産をすることになるでしょう。しかし、連帯保証人や保証人以外の家族に対しては借金の返済義務というのは一切ありませんので、借金の取立てをされた場合は対抗処置をとる必要があります。[/aside]
また、家族には内緒で自己破産をすることができますが、家族との信頼関係に溝ができる可能性が否定できませんので、必ず自己破産について話をしておきましょう。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]自己破産は人生の終了ではなく、人生のリスタートなので恥ずかしがる必要はありません。[/voice]