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【解説】自己破産の自由財産の拡張とはどのようなことなのか? | 自己破産プロ
自己破産プロ

【解説】自己破産の自由財産の拡張とはどのようなことなのか?

自己破産をしても手元に残すことができる財産が自由財産です。この自由財産とは、破産法により決められています。そして、破産法で具体的に決められている自由財産の他に、裁判所の決定により自由財産として認められる財産があります。これを自由財産の拡張と言います。

今回は自由財産の拡張について紹介をします。

自由財産とは?

まず、自由財産について紹介をします。

自己破産をした場合、債務が免除される代わりに原則として破産者は財産を処分しなければなりません。

自己破産は、破産者の経済的更生をはかるために、生活に必要となる最低限の財産については、自由財産となり処分する必要はないのです。

[aside type=”boader”] そして、本来、法律で定められている自由財産(本来自由財産)は、

これらになります。
[/aside]

新得財産

自己破産において処分の対象となる財産は、破産手続開始決定時の破産者が所有している財産です。そのため、破産者の財産であっても、破産手続開始決定後に取得した財産については、新得財産となり、換金処分の対象にはなりません。

差押禁止財産

破産手続は、制度的には債権者全員による民事執行です。そのため、さまざまな理由により民事執行において差押えを認められない財産については、破産手続においても換金処分を認めるべきではありません。

つまり、差押えが禁止されている財産は、自由財産となります。

差押禁止財産(差押禁止動産)は民事執行法第131条1項~14項にて決められています。
[aside type=”boader”] 第131条 次に掲げる動産は差し押さえてはならない。

[/aside]

また、民事執行法152条1項~2項、またその他の法令にて差押禁止債権が決まっています。
[aside type=”boader”] 第152条1項
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。

第152条2項
退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。[/aside]

また国民年金、厚生年金、共済年金など公的年金の受給権(国民年金法24条、厚生年金法41条)、生活保護費の受給権(生活保護法58条)

上記のものが、法律上差押えが禁止されている差押禁止財産となります。

99万円以下の現金

この現金というのは、紙幣や硬貨などの現金になります。銀行などに預金や貯金はすぐに現金化することができますが、法的にいえば、あくまでも銀行などに対する預貯金払戻請求権という債権になります。つまり、自己破産の自由財産の現金には含まれません。

そして、現金は債務者の生活の確保のため、現金も差押禁止財産となります。民事執行において、差押えが禁止されている現金は66万円以下となっています。

破産手続では、すでに債務者が経済的に破綻していますので、民事執行の場合よりも債務者の生活費が不足しているのが通常です。そのため、保護される現金の範囲を拡大し、99万円以下の現金を自由財産として認めています。

自由財産の拡張

この3つが法律によって自由財産になる財産とされています。

しかし、生活に必要となる財産は、事情によって異なってきます。事情によっては前述した法律で定められたもの以外の財産であっても、生活再建のために必要不可欠となるような財産があるということもありえます。

[aside type=”boader”] たとえばですが、重病にかかっており、保険加入を2度とすることができない破産者の場合、生命保険を解約されてしまうと、その破産者は2度と保険に加入することができない可能性が非常に高くなります。
さらに、足が不自由で自動車がなければ生活することができない破産者から自動車などの移動手段を奪ってしまった場合、足の不自由な人の生活は成り立たなくなります。[/aside]

そのため、破産法第34条3項にて下記のように決まっています。

破産法第34条第4項(破産財団の範囲)
裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

このように定めています。

つまり、本来、現金と差押禁止財産、そして新得財産にしか認められない自由財産の範囲が裁判所の許可により拡張してもらえ、これを自由財産の拡張と言います。

自由財産の拡張を認めてもらえるのであれば、自動車や銀行預金、退職金なども合計金額99万円以下まで保有することができます。たとえばですが、現金が20万円、預金が30万円、自動車の査定額が5万円しか財産がなく、自由財産の拡張が認められればそのまますべてを保有できる可能性があります。

自由財産の拡張が認められるのはどのような場合なのか

自由財産の拡張が認められるというのは、どのような場合なのかという点が問題になります。

破産法第34条第4項にて「破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる」とあります。

簡単に言い換えるのであれば、財産が破産者の生活に必要不可欠なものといえるかどうか、ということが自由財産の拡張基準となります。

自由財産の拡張基準

自由財産の拡張が認められるのは、限られた場合になります。

東京地方裁判所などの一部の地方裁判所ではあらかじめ、一定の財産について自由財産の拡張を認めるという基準を公開しています。一般的に「換価基準」や「自由財産拡張基準」などと呼ばれています。

この基準に該当する財産については、本来的に自由財産ではないものの個別具体的な必要性などの証明の必要がなく、自由財産として拡張されます。

東京地裁における自由財産拡張基準では、以下の財産については換価処分が不要とされています。ただし、各地の地方裁判所によって基準が異なりますので注意が必要です。

これらについては自由財産の拡張の申立てをすることなく、自由財産として扱われることになります。

東京地裁の自由財産拡張基準は、全国の多くの裁判所でも採用されています。それ以外の裁判所でも採用されている場合もありますので、スタンダードな基準であるといえます。

[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]大阪地裁の場合は東京地裁とは別に独自の換価基準などを定めているので、自己破産をする前には、どこの裁判所でもあらかじめ確認をする必要があるといえます。[/voice]

20万円基準と99万円基準

自由財産の拡張範囲として認められるかは裁判所の運用によってもことなりますので注意が必要です。前述した財産であればすべての財産が拡張されるわけではありません。金額についての基準があります。これも裁判所の運用により異なりますが、自由財産の拡張には20万円基準と99万円基準があります。

[aside type=”boader”] まず、20万円基準ですが、財産の種類1つ1つについて、20万円を超えているかどうかで判断される基準になります。前述したとおり、預金残高で20万円をこえる場合、自動車の査定額が20万円を超えるもの、そして、保険の解約返戻金で20万円を超えるものなどは、拡張が認められることなく、換金処分対処になります。[/aside]

しかし、銀行口座の預金残高が15万円、自動車で査定額が10万円、退職金債権で見込額の8分の1が20万円以下といった場合、自由財産の拡張が認められ、自己破産をしてもそのまま保有し続けることが可能です。

99万円基準

99万円基準は、財産1点1点の金額に関係なく、財産の合計金額が99万円を超えるかどうかで判断される基準です。この合計金額には、もともと自由財産である現金も含まれます

たとえばですが、現金が30万円あり、預金残高が40万円、自動車が5万円という場合であれば合計金額が75万円になりますから、すべての自由財産の拡張が認められます。この99万円基準であれば、預金残高の40万円は、自己破産をしてもそのまま保有し続けることができます。

[aside type=”boader”] 99万円基準については、大阪地裁で採用されていますが、東京地裁でも99万円基準に近いかたちでの運用がなされています。[/aside]

自由財産の拡張の範囲

自由財産の拡張については何でも認められるわけではありません。破産法の一番の目的である債権者への配当ができなくなってしまうからです。

そもそも、破産者の経済的更生のために99万円以下の現金や差押禁止財産などの自由財産を認めているのですから、最低限の生活をすることができないという事情が、自由財産の拡張には必要となります。

そのため、自由財産の拡張が認められるのは難しいのです。

前述のとおり、99万円以下の現金が自由財産とされていることの均衡から、自由財産の拡張の1つの目安は99万円であるといえます。

それなりの理由があったとしても、財産総額が99万円を超えてしまうような結果となる自由財産の拡張は認められにくいということです。

たとえばですが、すでに50万円の自由財産がある場合、自由財産の拡張として認められるのは49万円までであり、これを超える場合は自由財産の拡張を認めてもらうというのは難しくなるといえるでしょう。

自由財産拡張基準に該当しない財産の自由財産の拡張

東京地裁において、多くの財産について、申立てを要しない自由財産の拡張が認められています。

その反面、自由財産拡張基準に該当しない財産については、さらに自由財産の拡張を申立てる場合、自由財産の拡張が認められることは難しいのが現状です。

[aside type=”boader”] 換金価値が20万円以下の財産、拡張されている財産とあわせて価値が99万円以下であるというような場合であれば、自由財産の拡張が認められる可能性が高くなります。ですが、それを超える価値の財産については、その財産を処分できないという合理的な理由がなければ、自由財産の拡張が認められない可能性が高くなります。[/aside]

自由財産拡張をするための申立てについて

[aside type=”boader”] 自由財産の拡張については、

この2つの種類があります。[/aside]

基本的に自由財産の拡張をしたい場合、破産者が自由財産の拡張の申立てをおこなうことが必要になります。破産者が自由財産の拡張を申立てることで、裁判官が破産管財人の意見を聞いて自由財産の拡張をしていいか、それともするべきではないかを判断します。

そのため、自由財産の拡張をしたい場合は、自己破産手続の「管財事件」にならなければ、自由財産の拡張の申立てをすることはできません。

なぜなら、

破産法第34条第5項
裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。

このように決まっているからです。

たとえば、生活のために銀行預金は絶対に必要であり差押えられると困るという場合、破産者が申立てをおこなう必要があります。

実際の手続きとしては、自由財産拡張申立書を裁判所に提出するとともに、財産リスト(財産目録)の所定の項目にチェックを入れて、裁判所に提出することになります。

自由財産の拡張の判断についての決定は、自己破産の開始から1ヶ月以内におこなわれます。通常はもっと早くおこなわれます。

自己破産の手続きが開始されると、管財事件の場合であれば、預金通帳などの財産は破産管財人に預けることになりますが、もし自由財産の拡張がされると自動車や預金残高を保有することが認められれば、すぐに返却されます。

また、拡張できる自由財産に含まれないものであっても、生活再建のために必要である財産であると判断されれば、自由財産の拡張の範囲として認められます。

裁判所が職権で自由財産の拡張をする場合

基本的に自己破産を申立ては破産者が、財産が必要だからと申立てをおこなう必要があります。

[aside type=”boader”] しかし、場合によっては、裁判所が破産者の経済的な再生には必要不可欠であると判断した場合、破産者からの申立がない場合でも、裁判官の職権にて、破産管財人の意見を聞きつつ、自由財産の拡張を決定することがあります。[/aside]

まとめ

[aside type=”boader”] 本来自由財産とは、 [/aside] この3つが法律によって自由財産になる財産とされています。

しかし、この財産以外にも破産者が申立てることにより、また裁判所が必要と判断した場合、自由財産の範囲を拡張する、自由財産の拡張というものがおこなわれます。

一般的に自由財産の拡張として認められるものは、
[aside type=”boader”]

これらが、自由財産の拡張として認められます。[/aside]

自由財産の拡張は無限に認められるわけではなく、99万円以内までとしているのが一般的です。

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