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自己破産の手続きを安くできる少額管財事件とは?少額管財事件を徹底解説

自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2つの種類があります。そして、現在、管財事件といえば「少額管財事件(少額管財)」を指します。この少額管財事件は管財事件のデメリットを解決して自己破産をしやすくすることを目的としたものになります。

今回は、少額管財事件について紹介をしていきます。

自己破産をしやすくするための少額管財事件

自己破産の手続きは

この2つに分けることができます。

少額管財事件を説明する前に「同時廃止事件と管財事件」について触れていきます。

同時廃止事件

まず、同時廃止事件というのは、自己破産の申立てを裁判所へおこなった際に、すでに換金処分するだけの財産を持っておらず、免責不許可事由に該当しない人に適用される手続きです。

[aside type=”boader”] 破産管財人を選任し財産調査・管理・処分・債権者への配当などをしても意味がないので、破産手続開始決定と同時に破産手続の廃止をします。そのため、同時廃止事件(同時廃止)と呼ばれます。[/aside]

自己破産の9割はこの同時廃止事件であり、手続きを始めて2ヶ月~6ヶ月以内にはすべての手続きが完了します。

管財事件

次に、管財事件です。管財事件は、自己破産の申立てを裁判所へおこなった際に、換金処分するだけの財産を持っている場合、管財事件となります。破産管財人が選任されます。破産管財人は、財産調査・管理・処分・債権者対応や配当などを裁判所に代わっておこない、破産手続を主導します。

[aside type=”boader”] 破産管財人とは、裁判所が選任する外注の弁護士のことです。そのため、破産管財人が職務をおこなうための費用や破産管財人への報酬が必要となります。破産手続が煩雑になれば、費用がかさみ、破産管財人へ支払う報酬額も大きくなります。[/aside]

破産管財人へ支払う報酬についてですが、自己破産を申立てた者、つまり、破産者の財産から支払われます。自己破産の申立てをするときに裁判所へ納める予納金の額が高額になります。

予納金は自己破産をするための手数料・官報公告費のことを指します。管財事件では、予納金とは別に「引継予納金」というものが発生します。

通常、引継予納金は破産者から代理人弁護士に預けられ、代理人から破産管財人に引き継がれますので、手数料・官報公告費の予納金と分けて引継予納金と呼ぶのです。

この引継予納金の額は下記の表の通りです。

負債総額 予納金
5000万円未満 50万円
5000万円~1億円未満 80万円
1億円~5億円未満 150万円
5億円~10億円未満 250万円
10億円~50億円未満 400万円
50億円~100億円未満 500万円
100億円以上 700万円
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]つまり、引継予納金は基本的に50万円からかかります。しかも、同時廃止事件とは異なり、破産者の期間が半年以上もかかり非常に手続きが大変です。[/voice]

少額管財事件

管財事件では、一般人や中小零細企業の自己破産のハードルは高く、経済的更生をはかるのが難しくなります。

この問題を解決するために、東京地裁が手続きの簡略化をはかり、引継予納金を20万円までに下げようと平成11年に開始したのが少額管財事件です。

[aside type=”boader”] 破産法には、少額管財という制度の規定はありません。少額管財事件は、法律上の制度というわけではなく、あくまでも管財事件の予納金を少額で済むようにするという裁判所の運用の仕方です。[/aside]

そのため、地方裁判所ごとに少額管財事件を運用していないところもあります。また、運用の方法も地方裁判所ごとに異なります。

元々は東京地裁のみでおこなわれていましたが現在では、下記の地方裁判所でも実施しています。

呼び方 引継予納金
東京地裁 通常管財 最低20万円~
横浜地裁 管財事件 最低20万円~
さいたま地裁 管財事件 最低20万円~
千葉地裁 少額管財 最低20万円~
静岡地裁 小規模管財 最低20万円~
名古屋地裁 少額予納管財 最低20万円~
大阪地裁 一般管財 最低20万円~
京都地裁 管財事件 最低20万円~
神戸地裁 管財事件 最低20万円~
広島地裁 管財事件 最低15万円~
福岡地裁 管財事件 最低20万円~
仙台地裁 簡易管財 最低20万円~
札幌地裁 管財事件 最低20万円~

少額管財事件の注意点として、地方裁判所ごとに呼び方が異なるという点も挙げられます。少額管財事件を最初に始めた東京地裁でも現在では「通常管財」と呼ばれて「少額管財」とは呼んでいません。

また、同一の都道府県内でも裁判所の本庁と支部では制度や取扱が異なることがあります。

[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]そのため、地元の弁護士などに自己破産の相談をする際に、確認をするのがいいでしょう。[/voice]

同時廃止事件の問題点と少額管財事件

少額管財事件は管財事件の50万円の予納金と比べると20万円の予納金と安く見えますが、お金がない破産者からしてみれば、予納金が1万円~1万5000円で済む同時廃止事件のハードルをもっと下げればいいのではなかろうか? と思うかもしれません。

同時廃止事件も破産手続を迅速に処理するために開発された制度です。しかし、同時廃止事件には問題点があります。

それが、モラルハザードという問題です

同時廃止事件の場合は、破産管財人が選任されず、破産開始手続開始と同時に破産手続は終了してしまいます。そのため、前述したように予納金は1万円~1万5000円程度、その他の費用を含めても2万円程度あれば自己破産が終了します。費用面から管財事件ではなく、同時廃止事件として自己破産の申立てが多くされることになる原因です。

[aside type=”warning”]しかし、同時廃止事件は、破産手続がほとんどおこなわれませんから、破産管財人による調査がおこなわれません。そのため、十分な資産調査や免責調査がおこなわれず、原則的に破産者の申告書類のみを信じて破産手続を終了させることとなります。[/aside] [aside type=”boader”] つまり、審査があまくなるので財産隠しをしようと考える破産者が出てくるわけです。意図して隠そうとしなくても、存在自体を忘れている預金口座や保険などがある場合、債権者の利益を害することになります。[/aside]

管財事件にしておけば、破産管財人が郵便物までチェックしますから財産の申告漏れは少なくなります。また、管財事件をとっていれば、破産管財人が財産の他に免責不許可事由を調査しますので、これらを隠しとおすのは難しいでしょう。

同時廃止事件の申立てのモラルハザードが多く生じたために、裁判所としても同時廃止事件の運用に慎重にならざるを得なくなりました。しかし、破産管財人による十分な調査をおこなうためには、管財事件しかありません。管財事件にしてしまうと50万円の予納金が問題となります。

[aside type=”boader”] そこで、20万円と低額な予納金でも、破産管財人による十分な調査ができるようにしたのが少額管財事件です。[/aside]

管財事件の破産費用が高すぎるのは、破産管財人へ支払う報酬の額が原因なので、少額管財事件では、債権者集会・免責審尋などの手続きをすべて1日にまとめて原則3ヶ月以内に終わらせることで、予納金の額を20万円と安くすませることができるのです。

少額管財事件はあくまでも管財事件の手続きになりますので、破産管財人による適切な調査がおこなわれ、不当な財産隠しなども防止することができます。

少額管財事件について

前述したように少額管財事件は、破産管財人へ支払う報酬を安く済ませるために手続きが簡易化・迅速になっています。

[aside type=”boader”] 報酬金は最低20万円から、ですが、これは東京地裁の基準であり、たとえば広島地裁の場合15万円からとなっています。[/aside]

少額管財事件の場合には、通常の管財事件に比べて、複雑な手続き・処理がおこなわれない手続であるという特徴があります。少額管財事件は原則3ヶ月、申立てから2ヶ月~5ヶ月程度で破産手続きは終了してしまいます。

逆に、破産手続費用が高額となるような場合や処理が複雑となるような場合は、少額管財事件ではなく、通常の管財事件になってしまいます。

少額管財事件になるための条件

もっと詳しく少額管財事件になるための条件を見ていきましょう。

地方裁判所ごとに異なりますので、この基準が絶対にあてはまるというわけではありませんが、少額管財事件になるための条件としては、3つの条件があります。

[aside type=”boader”] [/aside]

弁護士に代理人を依頼する必要がある

破産管財人の負担を軽減するために、少額管財事件の申立ては、申立ての代理人として弁護士を選任した場合のみにしか、少額管財事件を利用できません。

[aside type=”boader”] 弁護士が代理人になることで、事前に債権者の調査・財産の調査が十分に済ますことができます。申立てをする段階である程度まで調査を終わらせておくことにより、手続きの簡素化・迅速化をはかるというのが狙いです。[/aside] [aside type=”warning”]個人が自己破産の申立をしても少額管財事件を認めてくれません。[/aside]

統計においても、全ての破産手続の内97%が弁護士または司法書士による申立となっています。本人申立ては、費用的にもメリットはほとんどなく、特別なこだわりがないのであれば、弁護士に依頼をしてしまった方がいいでしょう。

[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]司法書士も代理権を行使することができませんので、書類作成のフォロー程度しかできません。[/voice]

破産手続が3ヶ月で終結する見込みがあること

[aside type=”boader”] このような場合、少額管財事件を利用することができます。 [/aside]

少額管財事件は、3ヶ月以内に集結を目指すための手続きになります。そのため、破産管財人は、3ヶ月後に開催される債権者集会までに原則として、全ての財産を換金(換価)し、債権回収を終わらせる必要があります。
[aside type=”warning”] 換金するのに時間がかかる財産がある場合や、取立に時間がかかる債権がある場合、少額管財事件を利用するのは難しくなります。[/aside]

名古屋地裁などのように「破産財団の額が60万円を超えるばあいは、原則少額管財事件を利用できない」と金額の基準を定めています。

債権者に配当する財産がない場合

つまり、換金処分する財産がない場合も少額管財事件の対象にしている裁判所があります。これは同時廃止事件でいいのでは? と思うかもしれませんが、たとえば、破産者に免責不許可事由があり同時廃止事件を適用できない場合が、少額管財事件になります。また自由財産の拡張の真性をしたい場合でも、少額管財事件を適用します。

自由財産の拡張とは、自由財産とは「現金99万円以下」「差押禁止財産」の2つです。

それ以外の財産は原則、それ以外の財産とは、たとえば「自動車」「保険金」「預金」などを手元に残す場合は自由財産の拡張をする必要があります。そして、自由財産の拡張は管財事件か少額管財事件でのみしかおこなえません。

[aside type=”boader”] 破産法上、裁判所は破産管財人の意見を聞かなければならず、自由財産の拡張をする場合は、破産者は原則として、管財事件を申立てる必要があります。ただし、20万円以下の「自動車」「保険金」「預金」などは、自由財産の拡張の裁判が自動的にされたものとして扱われますので、申請を必要としない裁判所もあります。[/aside]

また、免責不許可事由に該当する場合ですが、たとえば、ギャンブルや浪費癖が原因で自己破産をした場合、少額管財事件を利用して破産管財人に反省している態度をみせていると、免責相当の意見書を書いてもらうことで、裁量免責による免責許可を得やすくなります。

実際に、財産はないけれど破産管財事件を希望するケースというのが多々あります。管財事件では予納金が50万円ですから、自由財産の拡張や裁量免責を得ることが難しくなってしまいます。

不動産がない場合(ケースバイケース)

不動産ですが、換金するのに時間が必要なしさんです。そのため、不動産がある場合は、少額管財事件を利用することができず、管財事件になってしまいます。

[aside type=”boader”] しかし、例外がありすぐに買い手が見つかる不動産なら問題なく少額管財事件を利用することができることが多くなります。また、住宅ローンが残っている場合は、任意売却となりますが、任意売却なら最短で3ヶ月以内で不動産の売却を済ませることが可能なので、少額管財事件となります。

また、財産価値があきらかにない不動産(1.5倍以上のオーバーローン状態の不動産)の場合は、破産財団から破棄されますので少額管財事件の利用は可能です。[/aside]

ただし、共同名義やごみ屋敷でごみの撤去費用がかかり、売却に時間がかかる場合、少額管財事件が認められても、追加の予納金を求められます。

訴訟しなければ回収できない債権がない場合

たとえば、否認対象行為がある場合などは、少額管財事件は難しいでしょう。

[aside] 否認対象行為とは、自己破産直前に財産を他人に譲渡したり、特定の債権者にのみ返済(偏頗弁済)をした場合、破産手続が開始されたのち、破産管財人が「他の債権者に不公平になるので、返金してください」と言う行為です。[/aside]

この場合、相手がすんなり応じれば問題はないのですが、相手がすんなり応じない場合は、破産管財人は、詐害行為取消訴訟という訴訟をおこして譲渡された財産や偏頗弁済されたお金を取り返す必要があります。訴訟になった場合、3ヶ月で裁判は終わりませんので、少額管財事件を利用することはできません。少額管財事件が利用できたとしても、追加の予納金が発生することでしょう。

債権者が多すぎないこと(複雑な案件でないこと)

条件としては債権者の数が50社未満です。

債権者が多すぎると少額管財事件は利用することはできません。

[aside] ただ、この条件については法人などに多い話になりますので、個人で該当するというケースは稀であるといえます。[/aside] [aside type=”boader”] 個人の破産者であれば、債権者の数が50社を超えるということは、ほぼありえません。そのため、あまり気にするべき問題ではないのですが、法人破産の場合は債権者数というのは、少額管財事件が利用できるかできないかの1つの目安となります。[/aside]

少額管財事件は、東京地裁以外の地裁でも、法人が少額管財事件を利用することが可能になってきています。しかし、法人の規模が大きくなってくる場合、債権者数はどうしても多くなってしまいます。多すぎる場合(50社以上)では、少額管財事件を利用することができません。

横浜地裁や大阪地裁の場合、少額管財事件が原則となっていますが、債権者の数が多い場合は大規模管財や個別管財といった、別の管財事件の手続きが用意されています。

また、名古屋地裁でも少額予納管財という制度がありますが、債権者が50社を超えた場合は利用することができません。

まとめ

少額管財事件の少額とは予納金の額が20万円からと、管財事件と比べると圧倒的に少額で受けることのできる管財事件になります。

同時廃止事件の場合、破産者の申告書類のみだけで破産手続きをおこなう関係上、財産隠しなどのモラルハザードが問題となり、地方裁判所も安易に同時廃止事件を選択することができませんでした。

しかし、50万円の予納金を必要とする管財事件では多重債務者が利用するにはあまりにもハードルが高く、経済的な更生をうまくはかることができない、ということで平成11年に東京地裁にて20万円の予納金で利用することのできる管財事件である、少額管財事件が開発されました。

[aside type=”boader”] 少額管財事件のメリットとしては

このようなメリットがあります。[/aside]

ただし、地方裁判所により運用の仕方が異なりますので、地方の弁護士にどのように運用されているのかを尋ねる必要があります。名称も地方裁判所ごとに異なってきます。

[aside type=”boader”] 少額管財事件を利用するためには、

この3点の条件がかかわってきます。[/aside]

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