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自己破産をしても免除されない非免責債権とは?

[voice icon=”/wp-content/uploads/woman_tag.png” name=”woman” type=”r”]自己破産をしてもすべての借金がなくなるわけではないと聞きましたが本当ですか?[/voice] [voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]本当です。非免責債権と呼ばれるものです。[/voice] [voice icon=”/wp-content/uploads/woman_tag.png” name=”woman” type=”r”]非免責債権はどのようなものですか?[/voice] [voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]たとえばですが、住民税・自動車税・国民健康保険などです[/voice]

今回は、非免責債権について紹介をします。どのような債権が非免責債権になるのでしょうか。

非免責債権とは

非免責債権は破産法253条に定められています。

「第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3 免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
4 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

破産法253条第1項について

租税等の請求権は非免責債権です。
[aside type=”boader”]

[/aside] このような、国や市役所が強制徴収できる債権は非免責債権です。

破産法253条第2項について

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権です。

たとえば、詐欺や横領、着服などです。

破産者が悪意で加えたとありますが、この悪意は故意ではなく、他人を害する積極的な意欲のことを指します。

不貞行為の慰謝料や損害賠償は含まれません。

破産法253条3項について

破産者が故意、または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償です。

つまり、他人に暴力を振りケガをさせた場合や重過失の運転で交通事故(人身事故)を起こした場合など、故意や重過失で他人の身体に危害を加えた場合の損害賠償請求権になります。

破産法253条4項について

これは、扶養の義務に係る請求権です。つまり、夫婦間の婚姻費用の分担、子供の養育費、そのほか、民法上の親族間の扶養義務による扶養請求権は非免責債権です。

破産法253条5項について

雇用関係に基づいて生じたい使用人の請求権などです。つまり、従業員に対する未払いの給料などは非免責債権です。

253条6項について

破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権者の請求権です。

破産者名簿とは、破産の申立て時に裁判所に提出する「債権者一覧表」です。知りながら、もしくはうっかり債権者一覧表に記載し忘れた債権は非免責債権になります。

破産法253条7項について

罰金などの請求権は非免責債権です。

刑罰などによる罰金、科料、追徴金、過料などは非免責債権になり、自己破産をしても免除にはなりません。

非免責債権でトラブルになりやすいもの

[aside type=”boader”] 非免責債権で、トラブルになりやすいものは、

これらになります。[/aside]

損害賠償請求権には免責されないものがある

[aside type=”boader”] 損害賠償請求権については、非免責債権になるものは

このどちらかです。[/aside]

どちらにも該当しないのであれば、その損害賠償請求権は免除されます。

たとえばですが、詐欺や横領などをして、お金を騙し取った場合、相手を積極的に害する意欲のある悪意があります。この場合、破産法253条第2項により非免責債権に該当します。これは、自己破産の直前に自己の財産状況を偽ってお金を借りる場合も同じです。

一方、故意がなくても自動車の運転の重過失にて相手にケガを負わせてしまった場合、破産法253条第3項により、非免責債権になります。

そして、離婚原因がDVや暴力などの直接的な加害行為である場合、慰謝料(損害賠償金)は非免責債権となります。

非免責債権にならない損害賠償請求権

自動車の運転で人身事故を起こしてしまった場合でも、その程度が一般的な過失であれば、その損害賠償請金は免除の対象になります。非免責債権になるものは、重大な過失がある場合のみです。

重大な過失がある場合でも、人のケガではなく自動車が壊れただけの物損事故であれば、その損害賠償債務は免責されます。

また、離婚原因が浮気程度であれば、発生する慰謝料は非免責債権にはなりません。なぜなら、妻への加害行為が認められないからです。この場合、自己破産をすることで免除になります。

[aside] これは、平成15年7月31日の東京地方裁判所で、判例が出ています。[/aside]

このよに、同じ交通事故による損害賠償請求や離婚による慰謝料でも、その理由は原因が、非免責債権になる場合とならない場合があるのです。

債権者一覧表に記載し忘れた債権は免責されない

債権者一覧表とは、自己破産の申立てをするにあたって、債務者が自分で把握している債権者・保証人の名前や会社名と住所をすべて記載したリストのことです。自己破産の申立てのときに、裁判所に提出しなければなりません。もし、債権者一覧表に記載し忘れた場合、記載し忘れた債権については破産後も支払義務が残ってしまう可能性があります。

また、故意に一部の債権者を記載しなかった場合は、免責不許可事由になります。

そして、債権者一覧表に記載しなかった債権は、わざと記載しなかった場合だけでなく、うっかり記載し忘れた場合でも非免責債権になります。債権者一覧表への記載を忘れると、その債権者は破産手続参加して異議を述べたり、配当を得るチャンスを奪われたりすることになります。そのため、その保障のために破産手続に参加できなかった債権者の債権は免責されなくなります。

そのため、弁護士などに自己破産を依頼する場合には、伝え忘れている債務がないかどうか、十分に注意して思い出す必要があるでしょう。

連帯保証人は忘れやすいので注意をしましょう

連帯保証人である場合、まだ一度も銀行などの債権者から請求を受けていないような場合は、連帯保証人自身も過去に連帯保証人になったことをすっかり忘れているというケースがあります。

数年前に友人の連絡保証人になっていて、その知人がまだ一度も支払を滞納していないようなケースです。このような場合でも、連帯保証債務をきちんと債権者一覧表に記載しておかないと自己破産後に友人が支払不能になった場合、銀行から連帯保証人としての債務の履行を求められてしまう可能性があります。

連帯保証債務や求償権の記載については、本人も忘れていることが多くなります。また、預金通帳やクレジットカード明細などから発見できないので、担当の弁護士も見逃しがちな債務です。債権者一覧表に記載し忘れることがないように注意をしましょう。

記載し忘れていても、自己破産手続開始後すぐなら補正ができる

債権者一覧表は、自己破産の申立て時に裁判所に提出します。

そのため、すぐに債権者の記載漏れに気付いた場合は、後からでも補正をすることが許されています。一般的には意見申述期間という期間までであれば、債権者漏れを補正することができます。

また、最終的に自己破産の手続きが終わった後に債権者一覧表の記載漏れに気付いた場合でも、相手が自己破産を開始したことを知っていたと証明できる場合、その相手には自己破産の免責を主張することができます。その場合、たしかに債権者一覧表への記載を忘れたが、相手は自己破産の開始を知っていたはずだという主張を立証して、裁判で免責を争うことになるでしょう。

非免責債権は、どうやって請求されるのか?

非免責債権として、たとえば、交通事故の損害賠償請求権や離婚の慰謝料が非免責債権だとして主張した場合、どう回収されるのでしょうか。

[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]回収される方法は、自己破産の手続きが終わったあとに請求書を送ればいいだけです。[/voice]

もしその請求書で破産者が任意で支払ってくれない場合、または非免責債権ではないと争う場合、別の裁判所で改めて通常訴訟を提起することになります。

非免責債権があると免責不許可になるのか?

もし、非免責債権があった場合に、それが理由で免責不許可になる可能性はあるのでしょうか。たとえば、債権者が「この人を免責不許可にしてください」と裁判所に行った場合、それでも免責不許可になるのでしょうか。

結論からいえば、非免責債権があることと、免責不許可事由とは直接関係はありません。よく誤解されるのですが。非免責債権があるからといって、免責不許可になることはありません。

[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]むしろ、非免責債権は他の借金が免除されることを前提にした例外的な債権です。[/voice]

非免責債権かどうかは誰が判断するのか?

自己破産を管轄する地方裁判所では、各債権について1つ1つ非免責債権かどうか、という具体的な判断はおこないません。

たとえば、破産した夫の元妻である場合、「離婚慰謝料は非免責債権だから、免責許可を下さないでほしい」と裁判所に異議を述べても意味はありません。「非免責債権があるかどうか」と「免責許可・免責不許可の判断」とは直接的に関係がないからです。

裁判所では、全体としてその破産者を免責にするのか、免責不許可にするだけしか決定をしません。例外として、個々の債権が非免責債権に該当するかどうかという判断はおこなわないのです。

そのため、非免責債権かどうかの判断は、自己破産の手続きが終わった後に改めて裁判所に通常訴訟(支払請求訴訟)を提起して、決めることになります。

非免責債権と免責不許可事由とは、関係ない

[aside type=”boader”] 自己破産の手続きで、非免責債権があるから、免責許可が下りないかもしれない、と心配する破産者がいます。しかし、非免責債権があるからといって、それが理由で免責不許可になることはありまえん。免責不許可になる可能性があるのは、唯一「免責不許可事由」があるときだけです。[/aside]

債権者から裁判所に私の債権は非免責債権だから、破産者を免責不許可にしてください、とお願いすることはできません。また、それにより裁判所が破産者をまるごと免責不許可にすることもありません。

非免責債権があるここと、免責不許可になることは別次元の話です。

免責不許可になるのは、免責不許可事由があるときのみです。

非免責債権に関する質問について

自己破産前に滞納していた公共料金は非免責債権になるのか?

一般的には、なりません。滞納している電気代・ガス代も免責されます。

しかし、下水道料金だけは例外であり、下水道料金だけは市町村が強制徴収することができる債権になり、破産法の租税等の請求権の中に含まれます。そのため、下水道料金だけは非免責債権になります。

そのため、自己破産をしても公共料金の多くは免除されますが、下水道料金だけは別です。

自己破産前に滞納していた介護保険料は非免責債権になるのか?

滞納している介護保険料は非免責債権になります。介護保険料は税金や社会保険料と同様に市町村が強制徴収(滞納処分)をすることが認められている非免責債権になります。国や市町村が強制徴収できる債権はすべて破産法上の「租税等の請求権」に該当します。そのため、非免責債権になります。

自己破産をしても免除にはなりません。

自己破産前に滞納していた保育所の保育料は非免責債権になるのか?

自己破産前に滞納していた保育料は非免責債権になります。

[aside type=”boader”] 保育料も児童福祉法により、市町村の強制徴収が認められているのです。そのため、「保育所の保育料」は非免責債権になります。一方、「幼稚園の保育料」は公法上の債権ではありますが、滞納処分の規定がありません。非強制徴収公債権なので、非免責債権にはなりません。また、認可外の保育所の保育料も行政が強制徴収する債権ではありませんので、非免責債権にはなりませんので、注意をしましょう。[/aside]

自己破産前の未払いの医療費は非免責債権になるのか?

非免責債権にはなりません。

破産者が直接、病院や薬局に対して負っている未払いの債務は免責の対象になります。ただし、妻や子供のために病院代や医療費を負担して、それを破産者である夫に分担請求をしている場合、婚姻費用や養育費の問題となりますので、非免責債権となる可能性があります。

自己破産前に借りた奨学金は非免責債権になるのか?

奨学金は非免責債権なりません。免除されます。

ただし、奨学金でまだ毎月の支払が開始していない場合、または奨学金の保証人になっている場合、債権者一覧表への記載を忘れてしまう可能性があります。注意をしましょう。債権者一覧表への記載を忘れてしまった場合、非免責債権になります。

まとめ

非免責債権は破産法253条に定められています。
[aside type=”boader”]

[/aside] これらが非免責債権です。よく誤解されるものとして、非免責債権があると免責不許可になるというものですが、免責不許可になるのは免責不許可事由に該当するときのみです。

そして、非免責債権の請求は、自己破産の手続きが終わった後にされます。非免責債権になるかどうかは、別の裁判にて決定します。

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