下部やFXなどの信用取引でできた借金は、ギャンブルと同じようなものなので自己破産をしても、免責不許可事由に該当してしまい免責されないと考える方が多くいます。しかし、それは自己破産の中でも間違って広まった情報にひとつです。
ギャンブルや陶器行為によりできたしまった負債は免責されないという規定があります。ですが、実務上では、悪質な場合を除きほとんどのケースで裁判官による裁量免責にて免責を受けることができるのです。
目次
FXや株取引で借金ができてしまう理由
株式投資をおこなう場合でも、投資対象やレバレッジの倍率が3倍までに制限されています。
つまり、110万円の手持ち資金がある場合、3倍の330万円までしかい株式の売買をおこなうことはできないのです。しかし、株の信用取引は空売りをすることができます。空売りの具体的な手続きは下記の3点です。
- 将来下落が予想される銘柄を決める
- 信用取引を通じて、証券会社からその銘柄の株式を借りてきて、売却する
- 株式が下落した時点で、その銘柄を買い戻し、証券会社に返す
予想通り、株価が下がってくれれば、空売りで利益を出すことができます。しかし、相場が想像とは逆に動いてしまうと問題になります。予想に反して物価が大幅に上昇してしまうと、高い物価でその銘柄を買い戻す必要があり、借金を背負うことになります。
[aside type=”boader”] ただし、通常は自己資金の範囲でおこなっている場合、借金は発生しません。たとえば、1株1,000円の株式を100万円購入し、その株が200万円まで暴落したとしても、元本が20万円に目減りするだけであり、元本割れをすることはありません。[/aside]FXの場合
FXについては、もっとも知られている米ドル・円の通貨ペアの場合で紹介します。
米ドル・円相場が、1米ドル=110円の場合、今後1米ドルが120円になると考えた人は、FXで米ドルを購入し、円を売却する取引をおこないます。この人の手持ち資金は110万円の場合、1米ドル=110円のときにアメリカへ行くと、1万米ドルを両替所で調達したら、110万円(1万米ドル×110円)と手数料が必要になります。実際、米ドル紙幣を手に入れようとしたら、同額分の日本円が必要になります。
ですが、FXは異なります。FXの場合、最大25倍までのレバレッジ取引が可能になっていることが多く、手持ちが110万円の証拠金をFX口座に入金することで、2,750円(110円×25)までの投資をおこなうことが可能なのです。
自己資金だけでは、110万円で購入できるのは1万米ドルですが、FXで25倍のレバレッジをおこなえば、25万米ドルを購入することができます。
実際、FXで取引をおこなった後、予想通りに1米ドル=120円まで円安が進めば250万円(25万米ドル×(120円-110円))の利益を得ることができるでしょう。これだけを見れば、非常にメリットがあります。
しかし、外国為替相場が大幅な円高に振られると非常によろしくありません。
[aside type=”warning”]仮に、リーマン・ショックのような大きな経済危機が起き、1米ドルが70円になってしまった場合、1,000万円(25万米ドル×(110円-70円))もの借金を背負うことになります。[/aside]株式取引では、値幅制限というものが設定されていますので、ストップ安やストップ高などがあります。しかし、外国為替相場には株式取引にある値幅制限がありません。そのため、FXの損失があまりにも大きくな場合、自動的に強制決済をおこなうロスカット制限がFX会社で取り入れられています。
[aside type=”warning”]このロスカットによって、証拠金以上の損失が出ないようになっているのですが、外国為替相場が急激に変動した場合、システムが対応することができず、ロスカットができないケースがあるのです。その場合には、FX口座に預け入れた証拠金以上の損失が発生して、追加証拠金をFX会社から求められてしまうのです。損失が大きくなると、追加証拠金も高額になり、それが払えないことから自己破産を検討しなければならなくなります。[/aside]
ただし、急激に外国為替相場が変動することは稀であり、通常は強制ロスカットで対処可能です。そのため、FX取引にて借金を背負うことはめったにありません。
FXと株式で借金を抱えてしまうパターン
FXにしても株式投資にしても、自己資金以上の借金を抱えてしまうケースは極めて稀です。
前述したようにFXであれば、急激に外国為替相場が変動してしまい、ロスカットや強制決裁が間に合わずに損失を抱えてしまうケースです。
また、消費者金融業者などで借金をして、FXや株の証拠金に追加で注ぎ込んでしまうケースになります。このケースは、FXや株式投資で借金を作ったわけではなく、単純に借金をしてFXや株式投資をしている状態です。
[aside type=”boader”] 実際問題、FXや株などの投機行為で借金を抱えるケースの大半が「消費者金融業者などで借金をして、FXや株の証拠金に追加で注ぎ込んでしまうケース」です。マージンコール(追い証)が発生したときに、強制ロスカットを回避するために、借金をして証拠金を追加入金するようなことを続けている場合、借金の額が膨らむ可能性が非常に高くなります。[/aside]キャッシングなどでお金を借りてFXや株などリスクの高い投機行為をしているのですから借金が膨らんでいくのは当然のことです。
たとえば、株式取引では2006年1月17日のライブドアショック、FXでは2015年1月15日の起きたスイスフランの暴騰によるスイスフランスショックがあります。急激な相場の値動きにより、強制決済やロスカットができなくて損失を抱えてしまうわけです。
急激な相場の値動きにより、証拠金以上の借金を抱える場合
FXの場合、強制ロスカットが正常に機能している場合、証拠金以上の損失を抱えることはまずありません。元本以上の損失が出そうになると、FX会社のシステムが自動で決済をするのです。
しかし、たとえば、証拠金60万円で、100円で10万ドルを購入したとします。もし、これが97円まで下がった場合、30万円の含み損になります。証拠金維持率が50%以下で強制ロスカットの場合、本来、この時点で強制決済が実行されます。そのため、強制ロスカットのおかげで、30万円の損で済み、手元には30万円が残ります。
[aside type=”warning”]しかし、急激な相場変動により97円での成り行き注文が約定せずに、90円まで下がってしまった場合、証拠金はすべて吹き飛び、40万円の借金を背負うことになります。[/aside]他にも、FXは、週末は売買できません。そのため、週末の間に大きなニュースがあり、値が動いた場合には、月曜日にいきなり強制決済されて大損するケースもあります。また、FX業者のシステム障害により、一時的に売買が成立せずに思わぬ損失を抱えるケースも存在します。
このケースで負債を抱えた場合、FX会社は損失を補填してくれません。そのため、損失額は自分で負担する必要があります。
株式投資の場合
株式の場合、FXとは異なり、暴落時には終日、値が付かない場合があります。そのため、たとえばライブドアショックのときのように、売り注文が殺到して連日ストップ安のケースでは、損切したくても株を売却することができません。結果、どんどん株価が下がっていくのを眺めているしかないという状況に陥る場合があります。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]現物取引であれば、自己資金を失うだけで済みますが、信用取引をしている場合では、暴落時には借金を抱えてしまうわけです。[/voice]FXや株式投資で借金を作った場合自己破産をすることができるのか?
当然ですが、裁判官や担当弁護士に正直にすべて説明して、誠実な態度をとり、今後の経済的更生や生活改善を約束するようにしましょう。裁量免責になっても当然だ、という不遜な態度をとったり、免責審尋を欠席したりするなど、裁判官の心証を損ねるような行動をとると裁量免責は難しくなります。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]しかし、そのような態度をとらない限りにおいて裁量免責を得る可能性は高くなります。初めて株やFXで自己破産をするのであれば、以降、株やFXをやめれば問題とはなりません。[/voice]お金を借りて投資をおこなった場合は?
消費者金融からお金を借りて銀行の外貨預金などで米ドルを購入するケースはどうでしょうか?
投資用のお金を貸してくれるのは、消費者金融業者くらいです。そのため、キャッシングを利用するというのが前提です。
キャッシングにて110万円を金利15%で借り、1万米ドルを購入した場合、1米ドル=110円から15%以上円安に動かなければ、投資としては失敗になります。
1米ドル=126円50銭(110円×1.15)よりも円安に進めば消費者金融から借金元利を返済しても利益を残すことができます。当然、円高になるリスクもあります。仮に1米ドル=70円まで円安になってしまうと、銀行の外貨預金口座にある1万米ドルを全部円に戻しても70万円にしかなりません。
消費者金融から借りた借金の元本は110万円です。金利分は16万5,000円となります。そのため、合計126万5,000-70万円で、56万5,000円分返済原資が不足することになります。この借金を返済するために、別の消費者金融のキャッシングを利用して、不足分を調達する必要があります。
証拠金を使用するFXとは異なり、ロスカットのような制度が発動することはありません。そのため、自分できちんと外国為替相場の動きを見ながら損益を確認する必要がでてきます。
また、FXはレバレッジを掛けるにしても元本は、一般的には自分のお金です。そのため、元本がゼロ以下にならない限り、借金を負うことはありません。しかし、投資の種銭が消費者金融からの借り入れだった場合、少しでも損をした場合、消費者金融への返済ができなくなることになります。
そのため、消費者金融への返済期限まで投資でプラスにして、さらに金利分まで稼がなければ、借金を背負うことになります。
お金を借りて投資をした場合でも免責になるのか?
お金を借りて投資をする場合でも、自己破産をすると免責の対象になるのでしょうか?
[aside type=”boader”] 結論からいいますと、裁量免責の対象になります。[/aside]お金を借りてギャンブルをしている人であっても、裁量免責の対象になりますので、借金して株やFXをしても裁量免責の範囲内であることは間違いないでしょう。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]もちろん、どうせ裁量免責になるのでしょうと裁判官の心証を悪くするような行動をとってしまうと裁量免責は難しくなります。[/voice] [aside type=”warning”]自己資金でFXや株式投資をおこなうより、キャッシングを利用してFXをするというのは、裁判官の心証が非常に悪いのが実情です。そのため、反省文など弁護士と相談をしながら作成する必要があります。[/aside]統計データ
裁判所の統計資料によれば、全国の免責申立事件のうち、免責不許可になるケースは0.1%~0.2%程度です。
[aside type=”boader”] また、日弁連がおこなった2014年の調査によると、免責を申立てた1235人のうち、申立却下・棄却は3件で免責不許可は0件でした。[/aside]実際に裁判所から「免責不許可になるよ」ということを促されて、自主的に取下げるケースも多いのでしょうが、それであっても全体の1%程度でしょう。基本的に、裁判所の運用方針としても「免責する」のが原則です。
免責不許可になるのは、非常に稀で特殊なケースです。弁護士と相談をすれば解決する可能性が高くなります。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]仮に、免責不許可になったとしても任意整理や個人再生などの別の手段がありますので、最初から深刻に悩むものではありません。[/voice]免責許可をえるためには?
免責許可を得るためのポイントとしては、まずは免責のコツをよく知っている弁護士に相談をして、可能であれば弁護士に委任をしましょう。
また、借金に至った事情や経緯を正直かつ誠実に説明をすることです。
そして、現在、FXや株をやめており、今後も手を出さず経済的更生をはかることです。
裁量免責が難しい場合
FXや株の信用取引でこさえた借金は、自己破産の免責不許可事由に該当します。そのため、裁判所から裁量免責が認められない可能性もあります。たとえば、過去にFXや株で自己破産をしたのに、再度、免責申立てをした場合、高い確率で、裁量免責を得ることができなくなります。
[aside type=”boader”] そのような場合、もう手段がないのかといえば、個人再生という方法があります。個人再生は民事再生法という法律に基づき、借金減額を裁判所に申立てることのできる手続きになります。自己破産で債務が免除されない人であっても利用することが可能です。[/aside]個人再生は、自己破産と異なり借金をどのような理由でつくったのかは問われることはありません。そのため、FXや株式投資でなどが原因でできた債務であっても個人再生を利用することができます。さらに、自己破産とは異なり個人再生を利用しても自分の財産、自宅や自動車などを換価処分する必要がありません。
ただし、自己破産とは異なり借金を全額免除されることはありませんが、個人再生が認められた場合5分の1の借金を減らすことが可能です。たとえば、FXで1,000万円の借金がある場合、個人再生を利用することで200万円まで債務を減額させることができます。
しかし、個人再生により減額された借金は原則3年間をかけて返済をしなければなりません。そのため、利用するためには一定の制限があります。
[aside type=”boader”] その制限とは、5,000万円以下の個人債務であり、継続的に収入が見込まれる人でなければ個人再生を利用できません。[/aside]また、個人再生を申立てが裁判所で認められるまでの間、家計簿を作成し、提出することが義務付けられます。再生計画に沿った規則正しい生活を送っているかどうかを家計簿により確認されるというわけです。3年間は無駄遣いをすることができないわけです。
個人再生も利用することができなかったら?
自己破産や個人再生を利用することができない場合、そのような場合の方がめったにないのですが、どの債務整理の手続きも選択できないのであれば、時効を待つしかありません。
5年~10年我慢をすることで、消滅時効を迎え借金がなくなります。
その間、訴訟されたり差押えをされたりしますが、差押禁止財産というものがあり、必要最低限の財産まで奪われることはありません。
[voice icon=”/wp-content/uploads/concierge_tag.png” name=”concierge” type=”l”]マンガやテレビドラマのように、身ぐるみをはがされて奴隷のような生活をするなんてことは、絶対ありません。[/voice]自殺をするのはダメ絶対
スイスフランショックやリーマン・ショックなどの為替市場の大きな変動時には自殺者が増加します。どう考えても返済することができない借金を前にすると絶望的な気分になりますが、自己破産をはじめとした救済策が多くあります。
借金問題でもっとも危険なことは、自分だけで考えこむことです。これが最大のリスクであり誰にも相談しないというのがもっとも危険なのです。債務整理の専門家である弁護士に早い段階でサーポトを依頼しましょう。
債務整理を得意とする弁護士事務所は初回相談無料という場所も多く。債務整理費用も分割払いを認めています。現状をしっかりと話すことで、借金問題の打開に向かうことでしょう。
まとめ
FXや株式投資は、基本的に元本が割れるということはありません。
しかし、外国為替相場が急激に変動することが原因で、FXで借金が発生する可能性もあります。実際問題、スイスフランショックのような事件がありますので、絶対に元本割れが生じないということはありません。
ここで問題になるのが、FXや株式投資のような射幸行為は免責不許可事由に該当するので、免責許可は下りません。しかし、裁判所の判断で裁量免責という制度があり、事実上免責を得ることができます。
しかし、免責を得ることができなくても、個人再生を利用することで借金を5分の1まで減額することが可能です。
なににしても、救済手段が多くありますので、自暴自棄になり自殺はするべきではありません。